アツいゲームのリアルな祭り:BitSummit Drift現地レポ
2024年7月。祇園祭が行われている京都で、もう一つアツいお祭りが行われていました。それが「BitSummit」。毎年京都で行われている日本最大級のインディゲームの祭典です。
今年は「BitSummit Drift」というタイトルで、昨年の2倍の規模(フロアが倍になったので文字通り2倍)で開催されていました。国内外問わず様々なクリエイターが集結し開発中のタイトルなどの試遊するブースがたくさん並ぶほか、任天堂などのスポンサーブースやFangamerなどの物販ブース、今年から新設されたアナログゲームブースなど、盛り上がりを見せていました。
ステージ配信も行われており、その様子はアーカイブから確認することができます。
そんなBitSummitへ友人たちと一緒に行ってきました。半日ほど居た中で見て回ったものを現地レポという形で紹介します。
現地で巡ったところ
▶︎ 『シュレディンガーズ・コール』(集英社ゲームズブース)
1Fと3Fの会場のうち、3Fからスタート。いくつかのグループに分かれてそれぞれで行動することにしました。一緒に行動する友人の気になるブースを聞いたところ、集英社ゲームズの『シュレディンガーズ・コール』を挙げてもらったのでまずはそちらへ。
自分はこの作品を知らなかったので、友人と試遊に並びながら前の人のプレーの様子を眺めていました。見ていると、電話越しの相手と会話しながら情報を集めていくタイプのアドベンチャーで、相手がどういう状況なのか、そして世界がどういう状況なのかを考えていくゲームのようでした。
そして、試遊の番に。不思議な世界観と謎の電話、試遊の範囲では謎は深まるばかりで、今後ストーリーがどう展開していくんだろうと気になるような作品でした。ゲームの触り心地はよくある情報を記録していくタイプのアドベンチャーな感じでした。その中で、電話をかける方法がいわゆるダイアル式になっており、その際の番号指定をコントローラーのスティックでできたので、(多分やらなくていいけど)スティックをダイヤルのように回しながら遊んでみていました。このやり方が個人的には結構気持ち良かったので、リリースされた際にはお試しあれ。
▶️ 『未解決事件は終わらせないといけないから』
続いて、『未解決事件は終わらせないといけないから』のブースへ。ここへは制作者のSomiさんとお話がしたくて向かいました。
Somiさんの作品は『Legal Dungeon』から触れて以降、今年1月リリースの『未解決事件は終わらせないといけないから』もプレーし、それらのシナリオやゲームデザインの素晴らしさにすっかりファンになっていました。
また、BitSummitの出展情報を探している際に、Somiさん本人が韓国から来ているという情報を得たので、「素晴らしい作品をありがとう」という気持ちを伝えにいくことに決めていました。
そしてブースへ。ブースでは同じくファンという方がいて、その方が日韓の通訳ができるというので、間に入ってもらいSomiさんと深くお話しさせてもらいました。Somiさんは、とてもとても優しくファンサもすごい方で、ツーショの提案を頂いたり、サインも頂いたりなど色々親切にしてもらいました。本当にありがたい限りです。当初の目的であった感謝も伝えられましたし、少し気になっていた翻訳周りの話(『未解決事件は終わらせないといけないから』の翻訳がすごい良いものになってる裏側の工夫など)も聞かせてもらいました。
こういった話をダイレクトにできるのはBItSummitの良さですね。通訳に入ってくださった方も本当にありがとうございました。
▶︎ 『和階堂真の事件簿』(room6ブース)
引き続き友人とブースを巡りながら、次に入ったのはヨカゼ・room6ブース。『アンリアルライフ』や『MINDHACK』など、心を動かすストーリーの作品を扱うのがヨカゼの印象で、こういう方向性が刺さりそうな友人におすすめする形で寄りました。
試遊台の空き待ちの間にスタッフさんと話す中で、ヨカゼとroom6の違いについて話を聞くことができたので、ヨカゼ作品既プレイの身としてはせっかくなのでroom6側の方をやろうと、『和階堂真の事件簿』を試遊させてもらいました。
お手軽に触れるミステリゲームで、PVなどでもあるように文庫本を読むようなプレー体験でした。情報収集して推理を立てて次の行動へと繋げていく定番の形ですが、知っている情報の中から一つだけ手持ちに入れることができ、それを会話相手に聞くことなどによって新たな情報を手にいれるシステムは、シンプルながら面白いポイントでした。どの情報をどの相手に使うと(有用かはさておき)新しい話を聞くことができるかということも確認できるようになっていたため、進行に困ることなくサクサクプレーすることができ、試遊範囲での所感としてはストーリーに集中しやすいような作りになっているように思えました。
▶︎ 『Electrogical』
その後、事前の出展作品調査で気になっていた作品の一つである『Electrogical』ブースへ。
この作品は、ピースを条件を満たすように組み上げていくパズルゲームで、可愛いドット調のビジュアルデザインも目を惹くところですが、事前調査で見たPVで一番気になったのがレベルデザインでした。少しずつ丁寧に難易度を調整しているように見受けられたので、そのことについて何か参考にしているものはあるかなど、試遊台の空き待ちの間に制作者さんに伺うことができました。
難易度の調整に関しては人に物事を教えた際の経験から、どのようにしたら分かってもらえるかということを考えて設計しているとのことでした。実際に触ってみると、ちゃんと考えるけど分かるようになっているというバランスが良く、気持ちいい触り心地になっていました。
その他、パズルのギミックのアイディアの源についてや今後の展望などについて色々とお話しさせてもらいました。年内リリースを目指しているとのことなので、今後の続報が楽しみです。
▶︎ 『アレンジャー・ロールパズリングの旅』(Nintendo Indie Worldブース)
3Fめぐりの最後に、NintendoのIndie Worldブースへと寄りました。ここで4月のIndie Worldの発表で気になった『アレンジャー・ロールパズリングの旅』の試遊が出ているとのことだったので触りに行きました。
『アレンジャー・ロールパズリングの旅』は見下ろし型の2Dアクションアドベンチャーなのですが、主人公が移動するとその移動に合わせて道ごとスライドするという特徴を持ったパズルアドベンチャーとなっています。このシステムが面白そうなのと、実際にプレーするとどんな風に考えることになるだろうということが気になっていた注目の作品の一つでした。
会場が広くなったのとIndie Worldの一部作品は個別に列形成がされていたおかげか、Indie Worldブースに到着すると待ち時間なしで試遊台に案内してもらいました。
そしてアレンジャーを触ってみたのですが、試遊の時間の中では思っていた以上に苦戦しました。ただ、ゲームが難しすぎるというわけではなく、この「スライドパズルの世界の考え方」に順応するのに時間がかかっただけなので、ゲーム自体はめちゃくちゃ面白かったです。ぱっと見、倉庫番パズルの考え方の延長でいけそうな気がしてしまい、「スライドするのは主人公の移動方向の前だけではなく後ろもまとめて動く」ということや「境界でループしている」ということをパズルを解く考え方に上手く組み込むのに時間がかかってしまいました。この独特の考え方に慣れ始めたところで時間が来てしまったので、続きは製品版で堪能したいと思います。
▶︎ 『トーキョーハイウェイ レインボーシティ』
1Fに移動し、別行動の友人たちとも合流。物販コーナーなども眺めつつ、今年から新設されたアナログゲームブースへと向かいました。
BitSummitは初めてという友人に試遊のチョイスをしてもらったところ、選ばれたのは『トーキョーハイウェイ レインボーシティ』でした。
ビルなどがある街で高速道路を作っていく作品で、相手の道路と交差した時に条件を満たせば勝利に近づけるというルールの影響で、まるでスパゲティのように絡み合った高速道路が出来上がっていきます。
友人たち4人でプレーしてみて、道路を配置する際の他の道路を崩さないように気を付けるというジェンガのようなハラハラ感の面白さに、改めてアナログゲームの強みを感じました。特にこの作品はデジタルだと楽しみ方がかなり変わりそうで、現地で触る作品にこれをチョイスした友人のセンスの良さが光りました。
道路の部品の端には滑り止めが付けられているなど、細かいところまで気配りがされている作品なだけあり、現地分が完売していたのも納得でした。
そうこうしている間に、BitSummitの閉会の時間になったので会場を後にしました。
おわりに
とてつもなく暑い日が続く京都ですが、BitSummitはクリエイターの方々の熱気が渦巻いていました。現地で触れた作品はごく一部で、他にも魅力的な作品がたくさんありましたので、それぞれの作品がリリースされたりするのを心待ちにしたいと思います。