「ひみつ文庫」で推しを語る
「ひみつ文庫」という言葉をはじめて見たときからなぜか、山奥にある隠れ家レストランを想像してしまいます。木造のコテージのような佇まいで、たまーに雑誌で取り上げられるようなお店。
自分の行きつけの場所だったら「どんなふうに書いてあるんだろう?」と記事の内容が気になるし、知らない場所だったら「こんな場所があるんだ」と少し興味が湧いてくる。ぼくの勝手なイメージなので、共感はしてもらえないかもしれません。
今日はふらりさんの初企画、「ひみつ文庫」に参加します。
企画がはじまって1週間ほど。ハッシュタグを調べると、もう30件もヒットしました(すごい…!)。noteのタイムラインで他の方の投稿を見かけるたび、美容室のイスで雑誌をめくるような気持ちで気楽に読みに行っています。
「ひみつ文庫」は、本を紹介する企画です。
本のタイトルと作者名をひみつにして、代わりにその本にまつわるキーワードを5つ挙げ、好きなところなんかを語ります。
タイトルあてゲームではなく、本紹介にワクワク感を足したような企画。マクドで言うとハッピーセットです(いやこれはさすがにちがうかもしれません。あとマクドに出る関西感よ)。
さて、どの本にしようかな……と悩んだ結果、読んだ本の中で特に、「描写に惹かれた一冊」を取り上げることにしました。
そのキーワードはこちらです。
・推し
・SNS
・ブログ
・ビート板
・自分の一番深い場所
上3つはTHE・キーワード的な単語です。読んだことがある方は、おそらく最初の「推し」だけでもわかります(タイトルと作者名はコメント欄にあります)。
キーワードの中でも特に「ビート板」の部分を語りたくて、この本を選びました。
有名な賞にも選ばれている本で、とにかく、冒頭の2行だけでも買って読む価値があると思います(noteでも冒頭って大事って聞きますよね。この本は冒頭2行…というかわずか18文字で、心をグッと掴まれます)。
その2行も、そして本のテーマも斬新で、読み出すとあっという間に残りページが少なくなります。
中でもぼくが惹かれたのは、このあと語る「ビート板」のような、所々の描写の部分です。もうここで記事を読むのを終えてすぐに本を買い、驚きとともにご自身で出会ってほしい、そう感じる描写があります(ほんとにそう思うので、こそっとリンク貼っておきます→こちら)。
「ビート板」の描写は、割と最初の方に出てきます。主人公の女子高生が、水泳の授業でプールサイドにいるシーン。彼女は水着を忘れて見学していて、授業の手伝いをしています。
そのときの描写がこちら。
ぜひじっくり、ゆっくり読んでみてください。
あたしが重ねて持っているビート板をありがとねと言いながら次々に持っていく女の子たちの頬や二の腕から水が滴り落ち、かわいた淡い色合いのビート板に濃い染みをつくる。(8ページ)
いい……!
何回読んでもいい……!!
このカメラがグググッとビート板に寄るかんじ。ぼくはここを読んだとき、むかしプールで見たことのある映像が急に頭に浮かんで、本の内容はもちろん、本を読んでいることさえも一瞬、忘れてしまったような感覚になりました。
こういう瞬間を「惹き込まれる」と言うんでしょうか。その連続が素晴らしい作品を作っているとしたら、ひとつひとつの文章も時間をかけて大切に書かないと、と思ったりします。
読書は「体験」なんだと何かで読みました。そのことを少しだけ実感できたような、「描写に惹かれた一冊」を紹介しました。
ふらりさん、ステキな企画をありがとうございます!