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【司法/予備・選択科目の選び方③】経済法編〜経済の「憲法」〜

司法試験・予備試験の選択科目を何にするかは決めましたか?

倒産法、経済法、知的財産法、労働法、国際関係法(私法)、租税法、環境法……たくさんあって悩みますよね。

「興味があるのは経済法だけど、自分に合わなかったらどうしよう…」「基本7科目がまだ不安だからできるだけ楽な科目がいいな…」「経済法に決めて法科大学院でも履修はしているけどイマイチ勉強法がわからない…」など、様々な悩みがあると思います。
 
本記事では、司法試験や予備試験の選択科目を何にするか決めかねている受験生と、選択科目を経済法に決めたものの勉強法がわからない、知りたいという受験生に向けて、様々な不安点・疑問点を解消していただこうと執筆したものです。是非、選択科目を決める際の参考にしてください!(ライター:吉澤/The Law School Times 記事部)


経済法とは

経済法という法律はない

司法試験にいう経済法とは独占禁止法(独禁法)のことを言います。司法試験、予備試験では、独禁法のうち主に不当な取引制限・私的独占・不公正な取引方法・企業結合、という4つの分野から2問出題がされる傾向にあります。
 
経済法を選択した場合には、独占禁止法という法律をマスターする必要があります。
 

独禁法のイメージ

独禁法では「競争」という概念が重要になってきます。企業同士が、企業間の競争を勝ち抜くために、他の企業より、価格を低くしたり、商品の質を上げようとしたり、様々な努力を行うことで、経済が発展し消費者の利益が増進していきます。企業間の競争と考えると難しく思えますが、スポーツやテストでも競う相手がいるからこそ成長できますよね。そう考えると「競争」の重要性がわかってくるのではないでしょうか。
 
皆さんも「カルテル」という言葉を耳にしたことがあると思います。カルテルとは企業同士である商品の価格を同一にするように合意し値下げ競争を避けようとするような行為をいい、これは独禁法にいう不当な取引制限の一種です。独禁法はこのような市場における企業同士の正常な競争を妨げる行為を禁止し、消費者の利益を保護するための法律なのです。
 
このように独禁法は、不当な取引制限・私的独占・不公正な取引方法・企業結合という4つの観点から、市場の競争を観察し、競争秩序を守っています。司法試験、予備試験の問題でも、この4つのツールを用いて競争を妨げる行為がないかを検討していくことになります。
 

ビジネスとの距離が近い!

独禁法は、企業間の競争をみていく分野です。具体的には、ある企業のビジネスのスキームを観察し、それが市場における競争に悪影響を及ぼすものではないかを検討します。そのため、非常にビジネスとの距離が近い法律です。法律とともに最新のビジネスまで学べるのも独禁法の大きな特徴です。
 

条文が少ない!

独禁法は、全部で100条ほどしか条文がない法律です。しかも、試験で出題される可能性が高いのは、その中でも10条ほどしかありません。なので、覚えることが少ないというのが大きな特徴です。条文が少ないので覚えるべき論証も非常に少ないです。
 
もっとも、少ない条文で多くの事例に対応できるように条文が抽象的であるという独禁法の特徴であるといえます。そのため、抽象的な条文を具体的な事例にあてはめるために、解釈が必要になります。よく独禁法は刑法に似ているといわれますが、それとともに独禁法は経済界の憲法とも言われています。
 
そのため、独禁法をマスターするためには、少ない抽象的な条文にあらゆる事例をあてはめられるように訓練する必要があります。

どんな受験生に向いているか

覚えることが少ない反面条文が抽象的であるという特徴があるため、暗記よりも現場思考が得意、頭を使うことが好きという方に向いていると思います。反対に、現場思考が苦手、抽象的な思考が苦手という方には不向きかもしれません。

また、独禁法はビジネスとの距離が近く、事例で出たビジネススキームを正確に把握する必要があるため、社会人経験者の方やビジネスに興味がある方にもおすすめです。
 
もっとも、現場思考的要素が強いといっても判例等の事例を研究すれば独禁法にもある程度のパターンが見えてきます。ですので、現場思考が苦手という方でも、事例研究を徹底すれば独禁法をマスターできることは間違いありません。
 

学習方法

まず、オススメの書籍等を紹介します。
・白石忠志『独禁法講義』(有斐閣、第10版、2023)
・菅久修一ほか『独占禁止法』(商事法務、第5版、2024)
・金井貴嗣ほか編『経済法判例・審決百選』(有斐閣、第2版、2017)
・川濱昇ほか『論点解析 経済法』(商事法務、第2版、2016)
公正取引委員会「相談事例集」(最終閲覧日:2024年3月4日)
 
独禁法は、抽象的な法律で最初はイメージが掴みづらいと思います。ですので、まずは、薄い本を一読して独禁法の全体像を把握するのがおすすめです

また、独禁法では、判例等の事例を学ぶのが超重要です。抽象的な条文が実際の事例でどのように運用されているのかイメージをつかむためにも判例等を学ぶのは必須です。また、判例集に掲載されている事例よりも細かい事例を公正取引委員会が「相談事例集」として解説とともにウェブ上で公開してくれているので非常に参考になります。

おわりに

いかがだったでしょうか?経済法がどんな選択科目なのか、どのように学習すればいいのか、視界がクリアになったでしょうか。「もう少し経済法がどんな法律なのか知りたい」という方「自分に合うかまだ不安…」という方は、上記の書籍を書店等で手にとって眺めてみてください。よりイメージが膨らむはずです。


The Law School Timesは司法試験受験生・合格者が運営するメディアです。「法律家を目指す、すべての人のためのメディア」を目指して、2023年10月にβ版サイトを公開しました。サイトでは、司法試験・予備試験やロースクール、法律家のキャリアに関する記事を掲載しています!noteでは、編集部員が思ったこと、経験したことを発信していく予定です。


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