没男のショートコント⑦【カスタマーハラスメントハラスメント】
2024年夏の未明、エセ関西某所の牛丼屋で。
男はいつものように店員を怒鳴りつけると、牛丼大盛り微妙に汁だく卵乗せに薄めの味噌汁を注文した。白い開襟シャツに金の鎖のネックレスがいやらしく輝いている。
この男こそカスタマーハラスメントのショウ。お客様でなくても自分は神様だと信じているどうかしちゃってる奴である。
バイトの男子大学生が震えた手で味噌汁をよそっている。もちろん、「薄めってどれぐらい薄めだよ」という疑問もあった。
だが、それ以上に心配なのはきょうの相棒がカスタマーハラスメントハラスメントのマサさんだということだ。
聞くところによるとマサさんはハラスメントにハラスメントで応じ職場を転々としてきたらしい。
「今夜は荒れる」
学生は観念した。
マサさんが、
「はい、牛丼大盛り汁だく卵乗せ味噌汁」
とショウのテーブルに置いた。
「俺が言ったのはさ、微妙に汁だくなんだけど。薄めの味噌汁なんだけど、注文と違うんだけど!ええ?!ド突くぞオラァ!ああん?!」
「ああ? 学生! オノレぇちゃんとやったよな!」
「あ、はい‥!」
「だとよ」
「客が違うつってんだろうがボケェゴラァ!作り直せよボケェゴラァ!」
「食ってから言えやアホンダラぁ!!紅生姜ぶち込むぞオラァ!」
ショウはiPhoneを手に動画を回し始めた。マサさんもすかさずREC!!
「撮ってるかんな!シバクぞワレェ!おいコラテメェらボケゴラァ!」
「こっちも撮ってんからなアホンダラがぁついでに防犯カメラでも撮ってるからなこのボケェゴラァ!!」
「こんな牛丼いらねぇよぶちまけたる!!」
「ああやってみろよオラァ!オンドリゃあ!紅生姜でも食らっとけオラァ!」
「醤油ソースの口は舐めてやっからなボケェ、使えるもんなら使ってみろやワレェ!!」
「舐め腐りやがってドアホ、土下座せんかい
!!」
「テメェが土下座しろや!このアホンダラぁ!!」
「今度あったらぶち殺してやるからな!!」
「タマとったるからな!せいぜい気ぃつけや!!」
マサさんは店を出て、ショウは厨房に立った。
私と同様、学生は思った。2人はどこで入れ違えたのだろう?
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