映画は奥深い【スタッフロール】
映画の特殊造形師とCGクリエイター。
正直マニアックな印象を受けました。
見ることはあるけど、
あまり映画には詳しくありません。
そんな私でも楽しめたので、
映画好きな方はもっと楽しめることでしょう。
本の構成が1部と2部に分かれており、
1部はマチルダという特殊造形師の女性が主人公、
2部はヴィヴィアンというCGクリエイターの女性が主人公です。
舞台は1部は1960〜80年代のアメリカ、
2部は2017年のロンドンです。
今でこそ映画の制作に関わる女性が増えていますが、マチルダの時代はまだ珍しかったようです。
・才能豊かな2人の女性
一部の主人公のマチルダも
2部の主人公のヴィヴィアンも
どちらも才能豊かなアーティストだと感じました。
映画への情熱も感じました。
それぞれの章を読んで、
2人ともどこか精神的な脆さを感じました。
マチルダは、モーリーンにCGの映像を見せられたのをきっかけに映画の世界からいなくなりました。
ヴィヴィアンは「CGは偽物」と批判されて、精神的に不安定になることもあり、睡眠薬を使っていました。
・無神経な女性に振り回される2人
1部の主人公のマチルダはCGが大嫌いでした。
突然家に上がり込んだモーリーンに「これいいでしょ。あなたもこっちの世界に来たらいいのに」と
これ見よがしに映像を見せたのも大きいでしょう。
特殊造形師として続けてきたことを
土足で踏み込まれるかのように否定されたら、
そりゃいい気分にもならないでしょう。
ヴィヴィアンも、
モーリーンに振り回されていました。
マチルダの住所を教えて
「スタッフロールに乗ることについてどう思ってるか聞くように」としつこく食い下がってきます。
会社に黙ってアメリカに行ってきたため、
謹慎処分を受けることになりました。
CG嫌いマチルダが、ヴィヴィアンに対して嫌悪感を示さなかったのにホッとしました。
しかし、モーリーンに対する嫌悪感は変わらず。
モーリーンは、マチルダとヴィヴィアンの才能を認めていました。
しかし、相手の気持ちを考えずに行動してしまう人と感じました。
マチルダに対しては、「無神経なことを言うものだなぁ」と感じました。
「これからは○○の時代だから、今までやってきたことを捨てて新しいことを始めましょう」と言われても、そんな簡単に受け入れられるものではないと感じました。
・エゴサーチに注意
これは2部に出てきた話です。
1部はまだインターネットがなかったので、
エゴサーチという概念もなかったでしょう。
2部では一部で制作された映画を
CG でリメイクする話でした。
ヴィヴィアンは同居人で、同僚のメグミから
「映画、ネットニュースは見ないように」と
釘を刺されてました。
でも、ダメと言われるとやってしまいたくなるのが人間の性と感じました。
その言いつけを守らず、エゴサーチをしたヴィヴィアンはCGに対する評価があまりにも辛辣で落ち込んでしまいました。
「やめとければ良かった」と後悔する有様です。
特に大きな事件や話題がある時は
注意が必要と改めて感じました。
・感想
こちらの方は167回直木賞の候補作です。
受賞作が発表されて随分後になってしまいました。
文学作品を読む時の参考にしている純文学YouTuber のつかつさんが絶賛されていました。
あらすじを聞いた時は「随分マニアックな題材だなぁ」と感じました。
CGにあんなに嫌悪感を示していたマチルダと
ヴィヴィアンが最後一緒に映画を見ていたシーンが良かったです。
CGについては、専門用語が出てきました。
「こんなに工程がたくさんあるのか」と
驚きました。
鬼滅の刃のアニメがなかなか公開されなかった理由がなんとなく分かりました。
前回の遊郭編が去年の2月頃ありました。
それから「今年中に次のシーズンやるだろうか?」と噂されてましたが、なかなか情報が入ってきませんでした。
去年の夏に、無限電車と遊郭編の展示会に行ってきました。制作資料の一部が公開されていましたが、指示が細かいことに驚かされました。
画質も飛び抜けて綺麗だと感じました。
「これだけの工程があれば、時間がかかるだろう」と納得です。
2部のヴィヴィアンの章で
必要に応じて長期休暇が認められたり、
必要な渡航費が会社から支給されたりと
待遇の良さを感じました。
日本国内の場合、映画のクリエイターの人たちが「インボイス制度をやるなら廃業かな」と。
インタビューを受けてたのを聞きました。
ヴィヴィアンのケースが
ロンドンでの一般的なケースかわかりませんが、
待遇が違うと思いました。
これからこのくらいの待遇をしなければ、
日本国内からクリエイターがいなくなってしまうのではないかと感じました。
以上、ちえでした。
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