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孤独な子育ての行き着く結果に戦慄した話【虐待の家「鬼母」と呼ばれた女たち】佐藤万作子著

「全部1人でなんとかしないといけない」

このプレッシャーが、子どもに向けられた時、
どれだけ恐ろしいことになるかを
思い知らされました。

こちらの本は、2004年に起こった
岸和田の虐待事件について書かれています。
三浦しをんさんの書評集に載っていた1冊です。

当時私は中学生でしたが、
あまり記憶がありません。

元の本は2007年に発売されています。
文庫化とともに、書き下ろしが掲載。
子どもを虐待死させた罪で服役後、
出所した母親のその後について
取り上げられています。
※岸和田の事件とは別。

もちろん虐待された子どもに対して
胸が痛むのは変わりません。
しかし、単純に虐待した保護者を一方的に責めることができなくなってしまいました。


・主に母親目線の話

餓死寸前まで追い込まれた被害者は私と同級生。
もし今ご存命なら35、6歳でしょうか。
長期間の絶食が原因で
重い障害が残ったことを触れられていました。

被害者の状況を考えると取材は困難でしょう。
主に継母の話が多いです。

子どもをこんな餓死寸前まで追い詰めて、
鬼母だとマスコミでは書かれたようです。

しかし、彼女の生い立ちや
同居していた時の状況を考えると
「ここまでなる前になんとかならなかったのか」と感じました。

子どもを養育する人間が
経済的、精神的に追い詰められると、
そのしわ寄せは子どもにくると実感しました。

・無理に同居をした結果

岸和田の事件の方も、その後出所した母親も、
子どもと無理な同居したことに触れていました。

岸和田の事件の方は、
継母にも実の子どもが1人いました。
被害者の父親は、自分の親(祖父母)に
息子2人(被害者と弟)の養育を丸投げ。
事実上、祖父母に育てられている状態でした。

この継母と一緒に暮らすようになった後に
息子2人は祖父母の家から呼び寄せられています。
そこから無理が出てきたと感じました。

出所した女性も同様でした。
虐待死させた子どもとその弟がいました。
弟とは今(執筆時点)も会えないとのことです。

こちらの女性も無理をしたと明かしています。
虐待死させた子どもは前の夫との子で、
離婚後、元夫の家族に預けていました。

彼女が再婚して子どもが生まれたあと、
預けていた子どもを迎えに行きました。

再婚するまで元夫側の家族と暮らしていたのに
突然引き離されたため
トラブルになったとのことです。
それが虐待死に繋がってしまったと
後悔していました。

児童相談所に相談したものの、
分離されて後は放置されたことを明かしています。

離婚して別の親族と暮らしている子どもと
再度同居するためには、
それなりに段階を踏む必要があると
考えさせられました。

・出所後の話

書き下ろしの事例の女性は
執筆時点で中学生になる子がいました。
虐待死した子供とは別の子です。

そこから家族がやり直すのは
とてつもない時間と労力がかかると実感しました。

まず懲役を終えて出所しても
児童相談所からは「子どもを虐待死させた親」というレッテルが消えないことを思い知らされます。

彼女の子どもが養護施設にいる時は
やり取りができたものの、
医療処置をする施設に移ってからは
全くやりとりができなくなりました。

施設を移った理由は、
酷く暴れるため、ADHDを疑われたからです。

確かに虐待死させた保護者を擁護できません。
簡単に同居できないのは想像できます。
しかし、一方的に引き離され、
会えなくなる子どもの気持ちを考えると、
これはどうなのかと考えさせられてしまいました。

医療施設に移るにしても、
いきなり児童相談所が家庭裁判所に持ち込む形で
強行手段に出たことには
疑問を感じずにいられません。

この事例を読んで出所後は
とてつもなく険しい道のりが待っていると実感。
知る機会はなかったので勉強になりました。

・感想

「誰も味方なんかいない」

そんな気持ちの中で、子どもに接しないといけない保護者の状況を考えると胸が苦しくなりました。

親になる前にこういうニュースを見ても
「悪魔のような親」にしか見えませんでした。

しかし、自分自身が親になった今、
置かれた状況を想像すると、
「孤独な子育てがもたらす結果が
こんなに悲惨なものか」

思わずにいられません。

児童相談所にしても
対応してないといけない家庭はたくさんいるのに、
人手が足りずに手が回っていないのを感じました。
肌で感じたのは、
息子の療育手帳の判定に行った時です。

療育手帳の期限がありますが、
「期限が切れますよ」というお知らせは来ないと言われました。
「時期が来たら予約して来所するように」とのことです。

この制度を仕組みを聞いただけでも
「そこまで手が回っていない」と実感しました。
検査を担当する人に連絡するものの
会議などでなかなか繋がりませんでした。

保育所や学校にも言えるけど、
子どもや保護者に関わる機関の体制が
貧弱なのを見ると
「何とかならないものか」としか思えません。

今後このようなニュースを見た後、
加害者側の親を一方的に責められなくなりました。
過熱するマスコミ報道から一歩引いた目で
見ることでしょう。

以上、ちえでした。
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