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肩透かしを食らいそう【グレイスレス】鈴木涼美著

「AV女優の化粧師」という聞き慣れない職業に
「何これ!?」と気になりました。

撮影現場の話は生々しく、
時々理解不能な話も出てきます。
元AV女優の著者だからこそ書けたと感じました。


・名前が出てこない。

主人公(語り手)の名前がわかるのは後半です。

名前は「聖月(みつき)」です。
引退予定の女優は「聖子」
固有名詞が出てくるのはこの2人だけです。

他の人は、母親、祖母、
鼻と胸をいじってる女優など
具体的な名前が出てきません。

それでも、人物像を想像できてしまって
不思議に感じました。

父親、付き合ってた男性、男優など
男性も出てくるけど、影が薄いです。
「男に興味がない」のを暗示しているかのようです。

・対比させるもの

聖月の家はかつて十字架が飾られてましたが、
6歳の頃に母親が外しました。

家の洗面所のタイルの描写を読んで、
「建物の説明が所々あるなぁ」と気づきました。
現代風の家ではなく、
レトロな印象を持ちました。

自宅の描写と、AVの撮影現場の描写の対比を
はっきり感じました。
自宅の描写は「聖なる世界」、
AVの撮影現場は「俗世界」と
いうところでしょうか。

他にも、主人公と母親、
ベテラン女優と新人女優など、
対比させるものが登場します。
注目してみると面白いですね。

・理解できないシチュエーション

撮影現場で、
「鶏とセックスしたことがある」
「洋服着たまま放尿する」など
想像を超えたのシチュエーションが出てきます。

「これで商売成り立つのか」と疑問に感じました。マニアックでついていけません。

同時に「人の性嗜好は違って当たり前」と
思い知らされました。

・感想

著者の鈴木涼美さんは
前回のギフテッドに続き、
今回の作品も芥川賞候補作になりました。

前回同様「描写が細かい」と感じました。
テーマと裏腹に、文章表現の繊細さに
目が行きました。
下品と感じるはずなのに、そこまで感じません。

むしろ、エロ目的で読んでしまうと
肩透かしを食らいそうなくらいです。

今回も受賞を逃しました。
図書館の受賞作予想で、
こちらに投票したので残念です…。

以上、ちえでした。
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