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「空き家問題は全国共通」と実感した短編【藍を継ぐ海】伊与原新著
科学の知識を織り交ぜながら、
その土地の歴史や人々の生活が
描かれていると感じました。
著者の本を読むのは初めてです。
科学の知識と登場人物の描写のバランスがいいと感じました。
今回は5つの短編のうち『祈りの破片』から
印象に残ったことを取り上げます。
・空き家問題はここでも
長崎県長与町の役場に勤めている小寺の元に
住民の女性から電話があります。
「空き家から青白い光が出てる」と。
「近づけん家だから何とかしてくれ」と言います。
小寺は1人で空き家対策の担当をしています。
長与町は南西部はベッドタウン、東側はみかん畑。
東側の方に空き家が多いです。
空き家問題は全国共通かと思いました。
・思わぬものを見つける
警察の協力を得て中へ入ります。
想定外のものを見つけました。
それは石のコレクション、
割れたガラス製品、陶磁器です。
小寺は原爆を思い浮かべました。
その破片には、記号みたいなものが書かれています。
家の持ち主がわからないことには
仕事が進まないため、
更なる調査を進めることにしました。
・やらされ仕事から自主的な仕事へ
最初は「役場の仕事だから」と
やらされ仕事だった小寺。
空き家に関する調査をするうちに
意識が変わってきました。
資料館に訪ねに行って学芸員に尋ねたり、
保管する予算について係長にお願いしたり、
空き家対策のマニュアルを作ったりするようになりました。
最初と態度が変わっています。
・感想
空き家に残された石や割れたガラスに
持ち主の執念を感じました。
「後世に伝えるために残すぞ」と。
小寺が作った空き家対策のマニュアルが
どんな内容になったのか気になりました。
1つ言えるのは「誰も住んでいないから、簡単に取り壊せばいい」っていうわけにはいかないことです。
空き家から出てくる残されたものを考えると、
安易に「取り壊してしまえばいい」とは言えなくなってしまいました。
以上、ちえでした。
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