人の心が変わるには時間がかかると実感した歴史小説【秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚】木下昌輝著
徳島の特産品が藍というのは知っていました。
そのきっかけはろく先生です。
今もオンラインショップで
藍の商品が売られています。
一時期、こちらのマスクを使ってました。
江戸時代、その特産品である藍を守るために
奔走した藩の若い役人たちの話です。
・問題点が山積み
1.藩の借金がかさむ
2.主君不在。
3.変化の望まない5人の家老が仕切っている。
4.大坂の商人が藍を安く買い叩いている。
柏木忠兵衛を中心に4人の武士が奔走しました。
問題1つ解決するにも、多大な労力がかかりました。
・改革の思わぬ壁
主君については、秋田の佐竹家から養子が来ました。
蜂須賀重喜です。
この藩主は、大胆な改革をしようと目論みます。
しかし、改革の過程で「旧きものは善、新しきは悪」という考えに、
彼らは苦しめられました。
藩独自の新しい制度を作っても、
江戸の幕府から「元に戻せ」と命令される
描写があります。
現代以上に改革は難しいと実感しました。
・変化には時間がかかる
柏木忠兵衛は藩主である蜂須賀重喜を
台所に連れてきてあるものを見せました。
箸でハエを取る技です。
忠兵衛の亡き兄の技でした。
「ハエは人よりも早く、目が恐ろしくいい。
人の速さで捉えるのは難しい。
欠点は遅い動きは逆に止まっているように見える」
制度を作っても、人々の心まで変化するのには時間がかかると伝えました。
この一件で重喜は隠居を取りやめました。
その後、重喜は朝食に柏木忠兵衛を呼びます。
こんな話をしました。
視点は違えど「拙速な改革は反発にあう」ことを示唆しました。
・感想
法律で制度を変えても、
人々の意識まで変わるには時間がかかります。
作中でも重喜が大胆な改革案を取り上げますが、
忠兵衛の盟友の中にも反対する人がいました。
「殿がこの制度を始めたら、主君押込をやる」と
言う者までいたくらいです。
彼の場合、制度自体には反対していなかったものの、時期尚早という理由で止めていました。
最終的に、藍の取引制度ができるまでには
多大な時間がかかりました。
作中の始めは25歳だった忠兵衛も、
終わりの頃には60代になってました。
※本書の没年齢から推測。
既に息子に家督を譲り、第一線から退いていました。
改革には長い年月がかかると思い知らされました。
以上、ちえでした。
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