
「適度な距離感を保つのは難しい」と感じさせたある夫婦の話【飽くなき地景】荻堂顕著
主人公治道は、
烏丸建設の広報課長である多部さんから、
結婚についてこんな助言を受けています。
「自分の帰りを待ってくれるような人を選ばない方がいい」
このセリフから思ったことを書きます。
・助言の意図
「自分の世界というものを持っている女性と結婚しなさい。そういう人なら、君の世界をも認めてくれる。そうじゃなきゃ、君の世界に別の人間が越してくることになる。その人が君の世界を気に入らなくて、あれやこれや変えてしまおうと言い出したら、君はどうする?」
この発言から、「自分の世界を持っていない女性と結婚した末路」を想像しました。
相手の領域に土足で入ってくる印象です。
「そういう女性と結婚するのをやめた方がいい」と助言しているように聞こえました。
私もそういう人と結婚したくないので、
多部さんの助言に共感できます。
・実際、治道が結婚した女性とは
取引相手の部長から紹介された
事務員の女性と結婚しました。
彼女の意思は「籍を入れても今の仕事を続けたい」とのことです。
治道の結婚は、多部さんの助言に従う形になりました。
・薄い家族の縁
後に1人娘が生まれますが、
家族の縁の薄さを感じました。
そう思った理由が2点あります。
1点目は、妻と娘が作中にほとんど出てこなかったからです。
妻と治道との会話は1回だけ出てきました。
しかし、娘との会話は出てきませんでした。
娘に関しては「道子」という名前にしようとして、
妻から反対されたという情報以外ありません。
2点目は、家族で住んでいる広尾のマンションより、
実家の屋敷に出入りしていることが多かったからです。
広尾のマンションは引っ越した時と、
妻と話している場面で出てきたくらいです。
確かに妻は仕事をしていて、
自分の世界を持っていたことでしょう。
治道の世界に
土足で踏み込むことはありませんでした。
しかし、相手のことを全く関心がないとなると
「夫婦関係でいる理由は何だろうか?」と考えてしまいました。
・感想
治道と妻との関係を見て、「ヤマアラシのジレンマ」を思い出しました。
寒いからお互いの体を寄せ合いたいけど、
近づきすぎるとお互いを傷つけてしまう葛藤です。
上司の多部さんは、近づきすぎた時の話を元に
治道にアドバイスしているように聞こえました。
しかし、離れすぎると家族の縁が薄くなってしまうと実感。
何事もバランスが大切だと学びました。
以上、ちえでした。
プロフィールはこちらです。
他のSNSはこちらです。