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『迷彩色の男』を読んで思い出した、発達障害の息子をカムフラージュしていた過去【迷彩色の男】安堂ホセ著
この本が読み終わった後、
このニュースに胸が痛くなりました。
この記事を読んで、他人事とは思えませんでした。
私には自閉症と診断された息子が2人います。
特に長男は慣れない場所、人混みが苦手です。
時々外出先で食事をしようとしても
環境が変わると食べません。
人が多い場所だとより酷くなります。
それを考えると、「我が家には避難所に行くという選択肢はない」と思わざるを得ません。
自宅が倒壊しなければ問題ありませんが、
もし倒壊の恐れがあったら
どこか別のところに避難しなければいけません。
この記事の中で「普段から、息を潜めるように暮らしてきた」とありました。
『迷彩色の男』の主人公「私」もまさに
「息を潜めて生きている」ように見えました。
・パートナーが刺されたのに
主人公の「私」はブラックミックスのゲイです。
いぶきというパートナーがいました。
いぶきもブラックミックスの日本人でゲイです。
アダルトビデオの配信をして生計を立てています。
以前読んだ『ジャクソンひとり』(同著者)に出てきた「イブキ」と同一人物?
2人は「ファイト・クラブ」という、
発展場※に通っています。
※発展場…男性同性愛者が、匿名的に不特定多数の男性と恋愛関係を省いて即座に性交渉を行える場として利用する場所のこと。
いぶきは「ファイト・クラブ」で
何者かに刺されました。
いぶきの容態が心配なものの、
主人公は立ち去ります。
その理由が後にわかりますが、
職場に知られることを恐れていたからです。
職場には、ゲイであることを公表していません。
警察から職場に連絡があると
知られてしまう可能性が出てきます。
・張り込み中の警察から話しかけられた
主人公は事件の後、別の男と関係を持ちました。
その男は「ファイト・クラブ」から出たところを
張り込み中の警察からの話しかけられていました。
男は不快そうな様子。
場所が場所なので、他の人に知られてしまうと
冷や冷やしている様子が伺えました。
警察は仕事だから当然のことをしているとしか思っていないでしょう。
一方、秘密にしてる人の立場から見たら、
「場所を考えてくれ」と思ってもおかしくありません。
・ノンプレイヤーキャラクターとは
主人公は職場で「ノンプレイヤーキャラクター」と呼ばれていました。
上司から呼ばれたのがきっかけで、社内に広まりました。
ノンプレイヤーキャラクターとは、
人間がプレイしていない、
自動で動いているキャラクターです。
「特に自分の意志を持たず、何かのプログラムに動かされるかのように淡々と生きている」
この言葉からこんな人物像を思い浮かべました。
ブラックミックスの日本人という時点で目立ちますが、「ゲイ」であることが知られないように、息を潜めて生きているように見えました。
・感想
読んだ後に、タイトルに入っている「迷彩色」に込められた意味がわかりました。
迷彩色は、周囲の色に溶け込むため、自分の身を隠すために使われます。
自衛隊の制服に使われていますね。
この物語の主人公の「私」や、
主人公と関係を持った「男」は
周囲からゲイであることを知られないために、
迷彩色を纏って、息を潜めて生きているように見えました。
その様子を見て、長男が2歳前後のことを思い出しました。
発達が遅れてるのを周りに知られないように
他の子どもがいる遊び場に連れて行くのを
やめていた時期がありました。
※現在は、遊び場に連れていきます。
同じくらいの子どもたちは、
言葉で意思疎通もできるし、
読み聞かせがあれば座ってお話を聞けていました。
それに対して長男は、言葉が全く出てこなかったし
「お話聞こうか」と話しかけても無視しました。
「この程度のこともできないの?」
周りからの視線に耐えられませんでした。
これからずっと、息を潜めて生きていくしかないと思っていました。
上記のニュースに出てきた一家のようです。
今回はLGBTの話でしたが、
自分の知らないどこかで、
迷彩色を纏って息を潜めて生きている人たちがいるのではないかと考えさせられました。
以上、ちえでした。
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