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文字が読めるのは当たり前ではないと気づきがあった芥川賞候補作【字滑り】永方佑樹著
※単行本発売が未定のため、掲載雑誌を読みました。
「使える文字がひらがなだけなのは不便」
冒頭の字滑り現象を見て感じました。
噂では字滑りに罹患中の人が掴むスマホの画面は字滑りのあいだ中、滑ってゆく先の表記一つしか、全く画面に出てこないらしい。
どの文字の字滑りが起こるかは、
実際に起こらないとわかりません。
・3種類の文字を使いこなす日本人
ひらがな、カタカナ、漢字の
3種類の文字を使いこなします。
日本社会に溢れている文章を見ると、
3種類の文字でが成り立っています。
それぞれ別の文字です。
冷静に考えたらすごいと思ったのは
私だけでしょうか?
・カタカナ、漢字のみでは不可能
「おはなしメモ」(おめめどう)や
SNS、テキストメッセージなど
書き言葉ならカタカナ、漢字のみで
文章表現ができるかもしれません。
しかし、話し言葉で表現するのは不可能と
本書で触れています。
カタカナは外来語、
漢字は音読みで表現しています。
音声で聞いただけで、
カタカナや漢字を想像するのは
難しいと気づきました。
・ゲシュタルト崩壊を思い浮かべる
字滑りの様子を見て、
ゲシュタルト崩壊を思い浮かべました。
(「ゲシュタルト」は形態・姿の意)全体が失われ、各部分に切り離された状態で認識されるようになる現象。
文字の認識などでも見られる。例えば、一つの漢字を注視しているとパーツごとにばらけて見え始め、一塊の文字として認識することが難しくなったり、よく知っているはずの文字の形に疑問を持ち始めたりするなど。
学生の時、漢字の書き取り試験で
間違えた問題を10回書いて
提出するように言われたことがあります。
10回同じ言葉を書いていると途中から、
記号のように見えてくることがあります。
意味のある単語として
認識するのが難しくなりました。
字滑りがゲシュタルト崩壊に見えました。
・感想
芥川賞候補作でタイトルが発表された時、
「このタイトルは『じすべり』?
それとも『あざなすべり』?」と
読み方に迷いました。
作中ではひらがなしか使えなくなる現象が起こり、
字滑りのことを「あざなすべり」と呼ぶ描写が出てきました。
当たり前のように使っている文字が、
当たり前でなくなったら
どんな世界になるのかと想像させる作品でした。
余談ですが、こちらは単行本化が未定と
著者のSNSで知りました。
文芸雑誌全般に言えますが、
文字が小さいので読むのが辛い時があります。
それに対して単行本は、
文字は大きく、ゆったりとした構成なので
読みやすいです。
確かに、掲載されている文芸雑誌なら
芥川賞受賞の発表までに読み切れるのは
理解しています。
しかし、文字が小さく、詰まっているため、
読むのが辛いです。
だから単行本化されるのを待っています。
せめて芥川賞候補作になった作品だけでも
単行本化してほしいと思ったのは
私だけでしょうか。
著者の作品が、再び芥川賞候補作になったら
一緒に収録されるのでしょうか。
その時また読み返します。
以上、ちえでした。
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