「私は私なのに」【N/A】年森瑛著
「嫌なものは嫌だ」
作中全体に渡って、
主人公まどかの叫びが聞こえてきそうでした。
・まどかが求めていたものとは
まどかが求めているのは代替不可能な関係。
恋人とは違います。
この関係は特別枠なので、
そもそもヒエラルキーの中に入っていません。
しかし、過去に付き合った彼氏は
嫉妬深かったとのことです。
友達や家族など他の人と親しくしていると
自分の立場を奪われるとでも思ったでしょうか。
ひょんな事からまどかは
女性と恋人関係になります。
その女性は、
教育実習生としてやってきたうみちゃん。
まどかが高校2年生のときでした。
当時うみちゃんは、高校1年生のクラスを担当。
「黒板の文字が読めない」と
全校で噂になったとのことです。
うみちゃんからインスタのDMが来ました。
「付き合わない?」と話を持ち掛けられました。
同性と付き合ったものの、
結局まどかが求めている
「代替不可能な関係」になり得ませんでした。
「女としてカテゴライズされたくない」
「そもそも私は私なのに、女性とか男性とか
何かしらのカテゴリーに型はめされるのが嫌だ」
そんな叫びにも似た思いが伝わってきました。
・LGBTQの話?
芥川賞の選評で、
「「SNS」「拒食症」「LGBTQ」 という
現代のトピックを並べたかのよう」と
指摘してた人がいたため、
「同性の恋人関係の話なんだろうか」と思ったくらいです。
実際に読んでみたら
「話には出てくるけど、それが主題ではなさそう」と感じました。
・2020年当時の生活者目線
作中の時期はおそらく
ウェットティッシュすら貴重品だった時期です。
一時的にマスクや消毒用グッズ、
ウェットティッシュなどが
品薄になっていたころと想定。
マスクをつけてる話、
バレンタインデーの時期に親から「人から手作りの食べ物をもらってくるな」ときつく言われてる友達が登場しました。
2020年から流行り始めた新型コロナウイルス。
女子高生の生活が、私が過ごした時代と比べて変わってしまったことを感じました。
新聞で出てくる政治や経済などの情報ではなく、
一人の生活者としての話を興味深く感じました。
「今の女子高生ってtiktokやインスタを使うんだな」と肌感覚でわかりました。
私が女子高生だったのは約20年前。
その頃は、高校生になって、やっと自分の携帯電話を買ってもらえる時代でした。
中学生に持ってた人もいましたが、
学校からは「不良が持つもの」とレッテルが貼られてました。少なくとも私の周りでは少数でした。
しかし、今の女子高生はSNSを使いこなすし、
私たち以上にネット環境をうまく使いこなせてる
印象を受けました。
今後私は、彼女たちから教えを請うことになるだろうと予感させました。
・感想
「女子高生が主人公の小説で楽しめるだろうか」
読み始めてそうそう感じました。
主人公が自分と境遇が近かったり、
年齢が近い方が親近感がわきます。
できれば女性の方が感情を移入しやすいです。
自分より若い人に対して
「どんな考え方をしてるんだろうか」
「何に夢中になっているんだろうか」
それを知るヒントになりました。
私たちの時代と比べて、
SNSやネットを上手に使いこなせてるなぁと感心。
これから私は老いていきます。
日々アップデートをしないと、それこそ「老害」と呼ばれそうです。
今後、彼らからたくさんのことを教えてもらうことになるでしょう。
今の時代に出版された小説かつ、
自分より若い人が主人公という話も
楽しめるかもしれません。
もしも中高生から、おすすめの小説を聞かれたら
以下のタイトル答えるでしょう。
『蹴りたい背中』
『推し燃ゆ』と並んで、
今回の作品も追加したいと思います。
まどかと同世代のお子さんがいる方は
親目線で楽しめそうです。
以上、ちえでした。
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