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大きすぎる贈り物の怖さを思い知らされたミステリー小説【元彼の遺言状】新川帆立著

ある日の母との電話です。
「新川帆立さんの講演会に行ったけど、とても面白かった。本を読んでみたいな」と話していました。
この時私は、この著者さんについて知りませんでした。

講演会が、思いの外面白かったのでしょう。
あまりにも楽しそうに話しているので、
私も読んでみることにしました。


・聞いたことのない遺言状

「全財産を僕を殺した犯人に譲る」
主人公剣持麗子の
大学時代の元彼である森川栄治が
こんな遺言状を残して亡くなったことから、
物語は始まります。

麗子は弁護士、栄治は森川製薬の御曹司です。
「なぜ殺した犯人に全財産を譲るのか」と
前代未聞の遺言状を謎に思っています。

犯人は「もらってラッキー」としか思わないのではないかと、誰もが首を傾げています。

物語が進むにつれて、
とんでもないことに気づきました。

・大きすぎる贈り物

作中にポトラッチの競争的贈与が出てきました。

伝統的な社会においてとりわけよく見られる慣習で、儀式などの場で公的に贈り物を与えることで、贈り物の与え手が名声を獲得し、受け手がお返しの義務を負うもの。特に、受け手は一定期間内に適切な返礼を行えなければ、非難され地位を失うことがある。

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部サイトより引用

栄治の兄で、人類学者の富治(とみはる)から話を聞きます。

富治は生まれつき、血液疾患を持っていました。
弟の栄治とは7歳離れています。
彼から骨髄移植を受けました。

「弟から大きすぎる贈り物を受けて潰れそうだった」と話します。
彼は弟に全財産をあげてしまったくらいです。

この法則を知って腑に落ちた彼は
人類学者になりました。

・死んだ人間から与えられる怖さ

与えた人間が生きているならお返しができます。
しかし、死んだ人間には返すことができません。

この事実から「栄治は大きすぎる贈り物として、犯人に復讐するのでは?」富治は指摘しました。

・感想

ミステリー小説として面白かったです。
賞を取ったというのも納得しました。

「身の丈に合わないものを受け取ると人は破滅する」と戒めになりました。
栄治のいとこである拓未は
こんなことを麗子に話しました。

「贈り物を正しく受け取るには、受け取る側の覚悟が必要なのでしょう」

元彼の遺言状 p317

殺された栄治の財産がどうなったかは
本書をお読みください。
他人から身の丈に合わない贈り物をされた時は
警戒しないといけないと学びました。

以上、ちえでした。
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