「しとやかな獣」監督:川島雄三/1962
こんなお話
パートが立ち並ぶ郊外の団地、前田家はその四階の一角を占めている。前田時造は元海軍中佐、戦後どん底の生活を経験した彼は自分の殻にとじこもり、子供たちを踊らせるあやつり師になった。息子の実には芸能プロの使い込みをやらせ、娘の友子は小説家吉沢の二号である。
レビュー
とある団地の一室に住む家族。・・・が、この家族がどうもおかしい。
伊藤雄之助が演じる父、山岡久乃が演じる母、どちらも恐ろしいほどにくせ者!
息子に横領させたり、娘に二号さんさせたりしても、まったく悪びれる様子もなく、しれっとしているのが逆に怖い。
2人(伊藤、山岡)ともほんと巧いんですよね。
山岡久乃なんておばあちゃんのイメージが強かったから、この役柄・演技は意外でした。
そして息子の彼女(?)の若尾文子と、それに絡む男たちとの愛憎劇も加わって、ほぼ部屋の中だけで繰り広げられる密室劇とは思えない濃密かつ刺激的なストーリー展開は引き込まれること必至!
時折挟まる歌舞伎のような音楽や象徴的な階段の使われ方が、これまたインパクト大。
映像としての斬新さも見逃せません。
出てくる人、どいつもこいつもみんな悪いっていうブラックな内容ですが、軽妙な仕上がりで何度も見たくなる名作です。このユーモアセンス、好きだわ。
さすが川島雄三ですね。
* * * *
しとやかな獣
1962/大映
<スタッフ>
監督:川島雄三
原作・脚本:新藤兼人
撮影:宗川信夫
音楽:池野成
美術:柴田篤二
<キャスト>
若尾文子
船越英二
浜田ゆう子
高松英郎
川畑愛光
伊藤雄之助
山岡久乃