「さがす」監督:片山慎三/2022
こんなお話
大阪の下町に暮らす原田智と中学生の娘・楓。「指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」と言う智の言葉を、楓はいつもの冗談だと聞き流していた。しかし、その翌朝、智が忽然と姿を消す。警察からも「大人の失踪は結末が決まっている」と相手にされない中、必死に父親の行方を捜す楓。やがて、とある日雇い現場の作業員に父の名前を見つけた楓だったが、その人物は父とは違う、まったく知らない若い男だった。失意に沈む中、無造作に貼りだされていた連続殺人犯の指名手配チラシが目に入った楓。そこには、日雇い現場で出会った、あの若い男の顔があった。
私的レビュー
日本人唯一のポン・ジュノ作品の助監督を務め、2019年公開の『岬の兄妹』で映画監督としてデビューした片山慎三監督の、長編2作目にして商業映画監督デビュー作。
「さがす」って、一体なにを探すのか?
予告や冒頭シーンで、てっきり「失踪した父親をさがすストーリー」と思っていたら・・・二転三転四転!
貧困や死の選択など重いテーマを散りばめた「社会派」でありながら、ミステリーでもあり、サスペンスでもあり、ヒューマンでもあり。さすがはポン・ジュノの助監督を務めただけあり、映画の娯楽的側面もバッチリぬかりなし。
いろいろと考えさせられながらも、どう展開していくのか、ラストまで目が離せませんでした!!
主演の佐藤二朗は言わずもがな、脇を固めるキャストも若手ながら本当にスバラシイ!
清水尋也は、めっちゃ猟奇的でサイコパス。
佐藤二朗を探す娘役、伊東蒼さんも素朴な下町の中学生がよくハマってる。(そして、ちょっとアホっぽい彼氏もいい味w)ラストの父娘のラリーのシーンも良かったなぁ。
そして、極めつけは森田望智!誰かわからん変貌っぷり!
「もっすごいイヤな女」を怪演しておりました。
ちなみに、「さがす」の舞台となるのは、大阪イチ(いや、日本一?)ディープな大阪・西成。あ、実はうちのめっちゃ近所ですw
この映画は、西成でないと撮れないよな〜ってつくづく感じました。
以前、ポン・ジュノ監督が「パラサイト 半地下の家族」のエピソードで『ニオイ』について語っていたのを思い出したんですが、撮影時、映像には映らないニオイを再現していたんだとか。
西成がもつ独特の雰囲気、臭さ、汚さは、この映画にとって大事な舞台装置なんですよね。西成に来たことない人は「こんな場所が日本にあるのか」なんて思うかもしれませんが、ものすごいそのままですw
地元民だからこそ、自嘲で言いますが、あのまんま、臭くて汚い街なんですw
「岬の兄弟」で監督はこう語っています。
「さがす」でも西成を舞台に貧困・障害・性・犯罪・暴力について、余すことなくむき出しにされておりました。
でも、映画の印象は「恐怖」ではなく、ただただ「悲しい」。ほんとに悲しいストーリーです。この親子がどうなるのか・・・いつか幸せに、西成の片隅で、笑って暮らせる日がくるといいな。そう思わずにはいられませんでした。
ま、でもどんな人間も受け入れる街、西成だから・・・きっとやっていけるよ。
さがす/2022
<スタッフ>
監督:片山慎三
脚本:片山慎三、小寺和久、高田亮
エグゼクティブプロデューサー:豊島雅郎、仲田桂祐、土川勉
プロデューサー:井手陽子、山野晃、原田耕治
ラインプロデューサー:和田大輔
撮影:池田直矢
録音:秋元大輔
<出演者>
佐藤二朗
伊東蒼
清水尋也
森田望智
松岡依都美
成嶋瞳子
品川徹