最近、急にコーヒーに目覚めた話。
ここ最近、やたらコーヒーに詳しくなった。
今の私にコーヒーの話題を振ろうものなら、知ったばかりの知識を口から溢れんばかりにドヤ顔で語りだすだろう。
コーヒーはずっと昔から飲んでいた。
私は経理の仕事をしているので、パソコンと睨めっこしていることが多く、午後の眠気ざましに、インスタントコーヒーをよく飲んでいた。
コーヒーが、美味しいか不味いかなんてよくわからなかった。
眠気が覚める、少しクセになる苦い飲み物。
私のコーヒーに対する認識はその程度だった。
仕事をするときは、なんとなく手元に置き、カフェや喫茶店に入ればとりあえずホットコーヒーを頼む。
ワンドリップコーヒーの方がインスタントコーヒーよりも美味しい、と同僚に言われて、そういえばそうかもなあ、とインスタントコーヒーからワンドリップコーヒーに変えた。
毎日必ず飲んでいたくせに、私はコーヒーに関して全くの無知なのだった。
そんな私が、コーヒーに詳しくなりたい、と思ったきっかけはこれだ。
渋谷パルコ3Fに店舗をもつ「虎へび珈琲」。
コーヒーが持つフルーツようなの酸味、カカオのような甘みを、ブレンドと焙煎の具合で絶妙なバランスで引き出し、飲めば誰もが「イチゴとチョコレート」を感じるAged Blendが人気だ。香料は一切使っていない。
私の大好きな作家、吉本ばななと「ほぼ日」と「虎へび珈琲」がコラボして作った「吉本ばななブレンド」は、まさにバナナの香りがするコーヒーだった。Aged Blendと比べて、酸味よりも甘みを強く感じた。
どうやったらこんな味になるんだろう、驚きと不思議でいっぱいで、コーヒーを、もっと知りたいと思った。
そして、今年の夏、缶コーヒーのUCCが実施している「コーヒーアカデミー」の、ベーシックコース12時間と、プロフェッショナルコース24時間を受講し、10月には勢いに乗ってプロフェッショナル認定試験まで受けてしまった。
最初は、コーヒーのウンチクを語れる程度になるくらいでいいと思った。
だから、ベーシックコースで終わるつもりだったのだが、想像した以上に、アカデミーの内容が面白く、講師の方々や、受講生の皆さんがとてもいい人たちで、また会いたいな、と思ったことも大きいかもしれない。
別に何かを目指しているわけではない。
今のところ、バリスタになりたいとは思っていないし、カフェを開業する予定もお金もない。エアロプレスの世界大会で優勝を狙ってるわけでもない。
では、なぜ、せっせと決して安くない受講料を払ってアカデミーに通い、コーヒー器具を買い集め、コーヒー豆を手に入れてはニヤニヤし、1杯1,000円近くもするコーヒーを飲みに行くのか。
楽しいからである。
コーヒーについて、もっと知りたくて、自分が「美味しいな~」と感じるコーヒーを淹れられるようになりたいからである。
焙煎されたコーヒーのフレーバーは800種類もあるという。
それは、コーヒーフレーバーホイールという、カラーチャートのような図で表される。私も、800種類の味の違いを感じて、表現できるようになりたいのだ。
私は、コーヒーの森で冒険をしているのだと思う。
コーヒーについての知識や技術を習得し、実際にコーヒーを淹れてみたり、飲んでみたりして、実践する。
「あれー、なんか違うなー」「この豆はこう淹れたほうが美味しいかもしれない」。
コーヒーの森の片隅に、工房を作って研究する。
何かに夢中になる、というのは、好奇心の森に入って、謎や不思議を解き明かすべく、探検したり研究したりすることなのだ。
コーヒーを学び始めたことをきっかけに、子供のように好きなことに夢中になる感覚を思い出すことができた。
今まで、仕事だの資格の勉強だの、ステータスのある生き方だの、やりたくもないことを夢中になって追い求めすぎていたから。
この感覚は大事にしていきたい。
好奇心の森は一つだけではない。誰でもいくつも持っていると思う。
でも、森の入り口は、探さないと見つからない。
いつも通っている道の途中にあるのかもしれない。
ベッドの下にあるのかもしれない。
自分が、いつのまにか手にしているもの、思わず目がいってしまうものに、ヒントがあると思う。
扉は最初、怪しく見えるかもしれない。ぼんやりとして見えづらいかもしれない。でも、とりあえず、開けてみたら。
違ったら戻ってくればいい。
そんな気楽さで続けられるといいなと思う。