読書メモ:独裁体制から民主主義へ
基本情報
『独裁体制から民主主義へ 権力に対抗するための教科書』
ジーン・シャープ 著
瀧口 範子 訳
2012年8月10日発行
実際に番組を見ることはできなかったが、「100分de名著」で取り上げられていたのを知り、興味がわき当時すぐに図書館で貸し出し予約をしてやっと読めた一冊。
構成
第1章 独裁体制に直面することの現実
第2章 交渉に潜む危険性
第3章 政治的な力は何に由来するのか?
第4章 独裁政権にも弱みがある
第5章 力を行使する
第6章 戦略計画の必要性
第7章 戦略を立案する
第8章 政治的抵抗を応用する
第9章 独裁体制を崩壊させる
第10章 永続する民主主義のための基礎作り
感想
ロシアのウクライナ侵攻等、現在も世界で紛争は続いており、少しでも勉強できればと思い、手に取った一冊。
独裁体制にも弱点があり、「非暴力」を大前提に戦略的に徹底抵抗することで独裁体制を倒すことができることを解説した本書。
独裁体制の倒し方をメインに書かれているが、「権力」への抵抗の方法論としても非常に参考になると思った。
抽象的に書かれており具体的ではないが、独裁政権にも独裁政権を成り立たせている源があり、そこには「人々の従順」があるとシャープ博士は指摘している。
人々が独裁に対して、従順ではなくなる=抵抗することで、独裁政権の源を弱体化させ崩壊させることができるとしている。
そのため、抵抗の方法は様々なあり本書の巻末に箇条書きでまとめられている。
また、「戦略」を立てることの重要性も説かれている。戦略を立てることで、独裁体制との闘いに備えることができ、また、独裁体制を倒した後に再び独裁体制に戻らないようにすることができる。
話が少し逸れてしまうが、大学時代に履修していた授業で、開発途上国の民主化を学ぶ講義があった。開発途上国で民主化が一旦成功しても、再び独裁体制に戻ってしまうケースがあると習ったことがある。
「経済成長」がポイントであり、民主化後も経済が軌道にのっていかないと戻ってしまうということだった。
権力に対して、徹底抵抗する方法は様々あるが、一番大事なのは人々の「覚悟」ではないかと思った。
本書内では、武力衝突や血を流すような抵抗には否定的であるが、現実的には、抵抗してすぐに成果が出るものでもない。
権力側もあらゆる手段を使ってくることが考えられるが、それでも戦い続けるには戦略に加えて、人々が「理不尽には従わない」ことを続けていく覚悟が必要になるだろう。
日本にいて、理不尽とまでは言わないまでも納得できないようことがあるが、自分自身「覚悟」は正直持てていないと思った。
日本に限ればまだ救いはあると思うが、今後どうなるかはわからない不安がある。来て欲しくないは、抵抗しないといけなくなった時にちゃんと覚悟を持てるように日々鍛錬しようと思わされた一冊であった。
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