「借りぐらしのアリエッティ」久しぶりに見たので感想書いてみる
「借りぐらしのアリエッティ」を通して見て最初に思うことは緑の美しさである。
アリエッティの登場シーン、翔が寝転ぶ庭、二階から見える庭、アリエッティの部屋にある花々、、、
どの場面を切り取っても青々とした緑と色とりどりの花々の美しさが潜んでいる。
実際、緑は美しいものばかりではないと思う。生き物の死骸が転がっていることもあれば枯れた花、草もある。虫食いでみじめな姿になった葉も。
そのみじめさに生き物の神秘が隠されていると私は思う。
しかし、アリエッティで描かれる緑の美しさはまるで異世界を思わせる。命の濃さが薄まっている翔がそこにいることも相まってまるで天国なのではないかと錯覚する。
もう一つ印象に残る違和感を感じる点がアリエッティとその家族の関係である。アリエッティの年齢に対して両親が年を取っているように思えるがそこは無視するとする。違和感を感じるのは関係である。アリエッティは子どもとして父や母に甘える様子を見せるが一方で敬語を使うこともある。そして父の権力の大きな家族であることを感じさせる。
父の一声で借りは実行される。
父の言葉で引っ越しも決まる。
それだけにアリエッティ家族が父を信頼し尊敬していることがうかがえる。
そんなアリエッティの父親は理想の人だと私は思った。
背中で語るという言葉が似あう、寡黙でありながらはっきりと物を言う。
寡黙であるがゆえに言葉に重みがある。
そんな人になりたいと思ってしまう。
アリエッティの部屋の緑が美しいと書いたがアリエッティの部屋だけでなくアリエッティの生活に魅力がある。専用でないものを使い衣食住を成り立たせるアリエッティ家族はまさに生きているという印象を受ける。
以前は生命を狙われ生きるか死ぬかというところで生きる人々に対して生の強さを感じていたがアリエッティの家族の生き方はしっかりと命を感じることができる。衣食住を自らの手でそろえること、自分の世話を自分ですることの重要性を教えられた。
好きなシーンの一つにおばさんと翔がドールハウスから入れかけのハーブティを見つけるシーンがある。そのハーブティを見つけたのは翔とおばさんだけ。小人がいるという証拠でありそれを最も欲しがっていたハルさんは見ていない。
全体を通しおばさんと翔は行動や言葉がのんびりしている。
焦ったり急いだりしない。
それに対して小人を捕まえたいという熱望のあるハルさん。
野望、熱望、意欲そういったものだけにとらわれていると大事な何かを見逃すことがある。体の力を抜いて生きてみると大事な何かが見つかることもある。
こんな台風の日にはぜひアリエッティを見なくては。