大崎市立おおさき日本語学校 日本語教育機関認定記念 おおさき多文化共生シンポジウム2024 記録
2024年11月23日(土)14時~16時半、大崎市立おおさき日本語学校 日本語教育機関認定記念 おおさき多文化共生シンポジウム2024が、大崎市地域交流センター多目的ホールで開催されました。地域交流センターはできて3年目とのことで、まだ真新しい、きれいな施設でした。高校はテスト期間中ということで、多くの高校生が施設内の共有スペースで勉強している姿が見られました。この施設が若い世代にも多く活用されていることがうかがえました。シンポジウムには県内外から90名ほどの参加者があったようで、会場は熱気に包まれていました。
2024年11月25日(月)地元の新聞社、河北新報の朝刊でも「多文化共生は地域から 宮城・大崎 外国出身の在住者がパネル討論 祭り参加、あいさつ大切… 日本語学校開設控え提言」という見出しの記事で取り上げられています(河北新報の記事閲覧は基本的に有料ですが、無料会員登録をするとオンラインで1日1本記事が読めます)。
このページでは、シンポジウムの記録を簡単にまとめたいと思います。
市長の挨拶
冒頭、大崎市の伊藤康志市長から挨拶がありました。おおさき日本語学校が文部科学省より日本語教育機関として認定され、2024年4月に開校予定であり、読売新聞の社説(2024年11月16日)でも取り上げられたことや、全国の様々な自治体から、既に多く視察が来ていること、今後、多文化共生の地域づくりを地域の人々や関係者とともに進めていきたい、という内容でした。
おおさき日本語学校認定報告
次に、大崎市日本語学校推進室の茂和泉室長から「おおさき日本語学校認定報告」として、認定に至るこれまでの経緯(令和4年3月第5期みやぎ国際戦略プラン策定から、令和6年10月30日に認定日本語教育機関として認定されるまで)、日本語学校の理念「新しき和の創造」、おおさき日本語学校の概要、主な施設などについて報告されました。現在、ベトナム、インドネシア、台湾からの留学生34名が合格し、入国手続き中であるとのことです。配布資料は青空を背景とした日本語学校校舎の写真、右下には「認定日本語教育機関(留学)」のマークが入っていました。
高校生の多文化共生取組発表
大崎市内の3つの高校(宮城県古川高等学校、宮城県古川黎明高等学校、古川学園高等学校)の生徒たちによる多文化共生をテーマとした探究学習の成果発表が事前に録画された動画を上映する形でなされました(高校はテスト期間中であるため、このような方法になったそうです)。日本語学校が地元にできるということで、それをきっかけに考えたことや、意識調査、どんな多文化共生の取り組みが可能か、などグループや個人の発表がありました。開校前から、このように地元の高校生が日本語学校と多文化共生の地域づくりに対して関心をもち、探究テーマに選んで取り組んでいる、ということはとても素晴らしいことだと思いました。今度、高校を訪問して生徒や指導されている先生方のお話を直接うかがってみたいと思います。
基調講演 国内の日本語教育の動向
次は文科省総合教育政策局 日本語教育課の増田麻美子氏による基調講演がありました。新しい法律に基づき、日本語教育機関の認定と日本語教師の国家資格を確認する仕組みが整備されたこと、日本語教育の参照枠が目指すこと、日本語教育の予算が増額され、地域日本語教育の改善も進められていること、日本語教育は社会教育と親和性が高く、全国で多様な取り組みが行われていること、日本語教育が社会のインフラとして重要視され、今後も整備が進められる予定であること等、盛り沢山で濃密な内容でした。私自身、増田さんのお話はいろいろな場面で拝聴していますが、いつもとてもわかりやすく、そして日本語教育に関わる者として力をいただく内容です。今回は日本語教育関係者だけでなく、地域の住民の方など一般市民の方も多く参加していましたが、このような講演を通して日本語教育の現状と展望を共有できたことは大きな意味があったと思います。
基調講演の後は10分間の休憩がありました。休憩時間には、今回のシンポジウムのパネルディスカッションに登壇されるパネリストの出身国、台湾、インドネシア、ベトナムのそれぞれの国で人気がある飲み物を振舞うという粋な計らいもありました。
パネルディスカッション
テーマ 地域の未来を築く一員として、住み続ける理由
パネリストは、現在、大崎市に住んでいらっしゃる蔡さん(台湾出身)、チュンさん(ベトナム出身)、デヒィさん(インドネシア出身)と宮城県国際協会総括マネージャーの大泉貴弘氏でした。コーディネーターは私が務めました。45分ほどのパネルディスカッションの中で「日本語の壁をどう乗り越えたか」「地域コミュニティの中で、どのような交流をしているか」「大崎市に住み続ける理由は」という3つの質問を柱に、それぞれの日本語学習の経験や地域の人々との交流に関する経験談を話していただき、大泉さんには長年外国人支援の業務に関わられている立場からコメントをいただきました。留学生や外国人を地域活動に巻き込むことで、自然な交流が可能になるとの提案もあり、留学生や地域住民との関係を深めるための具体的な行動や、普段からの挨拶や関係性の構築が重要であることが共有できたと思います。聴衆の方々は熱心にパネリストの語りに耳を傾け、笑顔で拍手をしてくれ、会場はとても温かい雰囲気に包まれていると感じました。これから留学生がたくさん大崎市で生活し、勉強していくことになりますが、既に地域に根付いて生活し、「大崎市が好き」と言ってくれる外国出身の先輩たちがたくさんいるということにも気づく機会にもなったと思います。会場に足を運んでくれた人々一人ひとりがその気づきを何らかの行動に結びつけて、一歩歩んでいくことで、多文化共生の地域づくりが進んでいくことになるのだろうと思いました。地方だからこその難しさを超えて、地方だからこそ可能になることの新たなモデルを大崎市が示していくことを期待したいです。
最後に増田氏から講評があり、シンポジウムは閉会となりました。
次回の大崎でのフィールドワークは12月の予定です。