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[エッセイ]ソグディアナ物語のこと


連載小説ソグディアナ物語



 この話を考え始めたのは、母を介護する中だった。ソグディアナ物語は、母との思い出の詰まったストーリーでもある。
 小説のプロットを紙やパソコンに書くのでなく、母を前に構想を何通りも考えながら語った。
 どういう登場人物か、どこが舞台か…そんな話を母は根気よく聴いてくれた。




 三章、四章は特に景色の描写が多過ぎるかもしれない。

 ある作家の小説の書き方の本では、
「調べたことや風景描写を書き過ぎず、会話をテンポよく入れる方が良い」とアドバイスしているものもあった。
 削ろうかとも思った。しかし、考え直し、今回はそのまま書こうと決めた。

 ピアニストの辻井伸行さんが、海の曲を演奏する際にお母様が海の情景を語ってくれたと、辻井さんがインタビューで答えていたのが印象に残っている。

 この小説の風景描写は、実は、目の不自由な方に景色を想像してもらいたいという思いで書いていた。
 目の見えない方が文章から、
「バザールの賑わい、市場に並ぶ果物やナッツのカラフルさ、パンや羊肉を焼く匂い」を想像してくださったら。

 サマルカンド舞踊の手の動き、楽器の音を描くのにも苦心した。

 また、それは外に出かけられない母に旅の気分を味わってもらいたいという気持ちからでもあった。
 この章のあらすじを話した時に、母は「そこに行った気分になったよ」と言ってくれた。

 そんな思い出の物語である。

 観光ガイドのように景色や歴史がしつこく書いている部分は、もう少し削った方が良いかと迷ったが、そんな訳で削らずに投稿することにした。

 読んでいただけたら嬉しいです。

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