羊と鋼の森の著者のエッセイ集『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。』を読んで
とりあえずウミガメのスープを仕込もう。
著者 宮下奈都
最近読んだ小説『羊と鋼の森』の著者の食べ物にまつわるエッセイ集。
雑誌ESSEに連載されたものと短編書き下ろし小説「ウミガメのスープ」が1冊となった本。
なんだか、読んでいて、なんとなく身近な感じがして、この本の著書紹介ページをめくり納得。
なるほど1967年生まれということでほぼ同世代。高校生の息子話や自分の身体の変化。
思い出話。
わかるよ~わかるわかる。な言葉が飛び出す
ほぼ3ページだけどみっちりとしたボリュームのエッセイが盛りだくさん。
と言いつつ、私に足りない母の想いや、料理愛、子育て方
書くのが本業なのだから
当たり前に表現力がスゴい。
私もこんな風にエッセイが書けたらな
そんな風に思ってしまう。
もちろん小さなことでも日々感じとる力が必要だろうけれど。
豆を煮る
というエッセイに
小さい頃、いんげん豆をもらったときに、
言われた言葉。「いんげん豆だよ。帰ったら土に蒔いてごらん。芽が出るから」と。
土に蒔けば芽が出る。そうな風に考えた事がなく、このマメは生きているんだ。種でもあり、命でもある豆。生きている豆と悟り
それを食べることが急に怖くなったという著書の感性。
そして、その思い出とともに、今、いんげんを1袋買い、家でトマトやズッキーニと煮込んだスープを作ろう。「豆の中で眠っているこれからを芽を出すはずの力まで、一緒に。」飲もうと結んである。
これこそ、食べ物が、身体を作るということだよねと気づかせてくれる。
うんうん料理は面倒だし、若いときはガッツリ味の濃いモノや油ぎっている感じの方が美味しいと思っていた。まあ昔ほどではないけれど
夜勤明けの日にはお肉が食べたくなる。
身体が求めているんだろうな。
年齢とともに変わる味覚とか、健康について考えたり、色々と頭の中で色々考えが浮かんでくるのは食べる行為は、人と切っても切り離せないということだからかも。
さて、もうひとつ
もし、あなたがものすごく美味しいと思った食べ物を人に伝えるときってどんな言葉をつかいますか?もちろん、改めてそんな風に問われることはないだろうけれど、
本の中のエッセイのひとつの
ものすごくおいしいということ
では、担当編集者と共に食事をした際、
「どうですか。お口に合いませんでしたか」
と言われ答えた言葉
「家族にも食べさせたいと思いました」と。
夫、息子たち、娘は、そして両親がなんというだろうか。そんな風に思ったことを伝えると
編集者が「それって最高の褒め言葉ですね」と。そんなやり取りで、これこそ、ものすごくおいしいってことかもと気がつく著書。
美味しいものを食べたら、また来たいって気持ちの他に付いてくる、あの人と一緒に来ようとか、きっと誰もがそんな気持ちを持ち合わせているだろう。そんな風に思うけれど、
そうだよなぁとなんだか家族への愛を感じるエピソードが良い。
そうした話があったかと思うと、
目や耳が衰えているなら、舌だって衰えているに違いない。音楽を聴くのがとても好きだから聴覚が弱ったら悲しいだろうと。老いについても触れているが、今、楽しく暮らしている。悪いことばかりじゃない。神経質なまでに過敏だった感覚が、磨耗し穏やかになりつつあると。
もうひとつお気に入りのエッセイをご紹介。
夫も好きだった手作りのプリン。
焦がしたカラメルの苦さで小さい息子の口には合わず、作ることがなくなってしまった。
息子も大きくなり、今こそ美味しかったプリンを復活させたい。
そうだプリンを作ろうと思ったら、直ぐに作れるようになる、そんな野望。
そこで
台所まわりに手を入れよう。まずは片づけと本棚の整理だ。収納を見なおそう。使わない食器を処分してわかりやすい収納を心がけよう。どこかから、あの料理本やレシピノートが出てくることを願って。
整理収納アドバイザーの私には、この気持ちの流れってとってもひかれるし、ワクワクするのです(笑)
料理好きでなくても楽しめる1冊。
おひとつ、どうぞ。