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みけこの散歩26(「星を編む」を読んだこと)
凪良ゆう さん著 「星を編む」を読んだ
読み終わって本を閉じた時、テーブルの上のその横は、涙や鼻水を拭いたテッシュの山ができていた。
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「汝、星の如く」の続編なので、それを心に甦らせながら、ゆるやかに物語に潜り込んで行った。
いつも私は小説を読む時、頁を捲るたびにその本の中に潜り込む感覚になる。
前作の「汝、星の如く」は本屋大賞がきっかけで読んだのだが、ハッピーエンドが好きな私にとっては、作者が綴る言葉の美しさと、それにより脳内に広がる景色に反して、結末のなんともやるせない悲しい物語が、正直好きになれなかった。
いや、たとえ小説の中とはいえ世の中はそういうものだ、甘くないのだ、と自分に言い聞かせたとしても、せめて物語の中では幸せを噛み締めたい、という浅はかな考えを起こしてしまっていた。
けれどもこの「星を編む」は、前作に対し私が心に残していたわだかまりを物語の時間を遡ったり、平行する世界や素敵なその後を描いたりすることで、新たな涙で洗い流してくれ、温もりもくれた。
物語は心の奥深くに沁みて、文章は大切に書き留めておきたくなるような言葉で溢れていた。
今の世の中の問題、昔からの問題、家族の問題、私の心の問題…
そういうものをぐるぐると混ぜて、引き抜いたその棒の先からしたたるしずくを軽く振って飛ばし、全く大したことがない事にしてしまうように、それをさらりと解決させてくれるような言葉が綴られていた。
そして、その綴られた言葉は、私の心の中の透明な糸をキンと弾き、弾かれた糸から涙のしずくを溢れさせた。
溢れる涙が洗い流したものは、それがどんなものだったのか思い出せないくらいさっぱりとしていた。
悲しくて涙するのではない、感動とも違うなんとも不思議な涙。
たぶん、納得の涙だ。
腑に落ちた時の安らかな涙。
本を閉じて、ゆるゆると現実に浮上してもまだ、椅子に沈みこんだまま暫く立ち上がりたくないような感覚。
鼻を啜りながら目を瞬き、
ああ、本を読むことが好きだと噛み締めた。