【シン考察】映画「ルックバック」ネタバレあり感想&徹底考察
どうもTJです
今回は藤本タツキの読み切り漫画を映画化した「ルックバック」についてネタバレありでレビュー&徹底考察していきたい
原作を初めて読んだ時もとてつもない衝撃を受けたが、今作の完成度も周りの評判が裏付ける通り凄まじい
映画化としての最適解を叩き出した今作を読み解いていく
あらすじ・キャスト
監督:押山清高
藤野役:河合優実
京本役:吉田美月喜
TJメモ
主演の2人はどちらも声優初挑戦だったらしいが、聞いていて全く違和感は感じない素晴らしい好演だった
“映像”で語る
今作を語る上でまず欠かせないのが映画化としての完成度の高さだ
原作が素晴らしかったのは、まさしく絵で語ること
藤野の背中姿だけで季節の移り変わりを伝えるところや京本に卒業証書を渡した後の登下校の見開きコマなどは藤本タツキの計り知れない絵力のセンスを感じさせる
今作は原作の世界観を損なわない、いやむしろその世界観を拡張させた形でのアニメ化に成功している(絵から映像で語ることに成功している)
これは押山監督が原作のニュアンスを損なわないよう原動画という手法で原画の荒さをそのまま動画として反映させているからだそう
もし原作をフルCGでアニメ化していたら発狂ものだったが、今作は藤本タツキが生み出したザラザラとした筆感をそのまま体感することができる
才能の共鳴
物語の冒頭、藤野は顔の知らない不登校の子京本の絵を見せ愕然とする
今まで自分が学年で1番絵が上手いとして守ってきた立場が一瞬にして瓦解したのだ
しかしここで注意すべきなのが藤野も天才だということだ
京本は絵は抜群に上手いが、ストーリーを描くことができない(これは家に閉じこもっていることも起因している)
一方、藤野は絵の上手さは京本に劣るものの、ちゃんとストーリーを作ることができる
絵が抜群に上手い京本とストーリーを作ることのできる藤野
この2つの才能が立ち合い、共鳴する姿こそが今作「ルックバック」であり、従来の“青春”を再解釈した新たな青春映画でもある
この青春映画において印象的なシーンがある
小学校6年生の頃、一人で絵を描いている藤野に友達が来て「いつまで絵を描いているの?」と言う
すると別の友達が来て、その友達は「置いてかないでよ」と言い残して去っていく
その後、高校に進学し、藤野が廊下を歩いていると再び「置いてかないでよ」という声が周りの生徒から聞こえてくる
「置いてかないでよ」
劇中で2回リフレインされるこの台詞だが、藤本タツキも学生の頃、藤野と同様に絵を描いていると周りから置いていかれる感覚があったのではないか
しかし小学校時代の「置いてかないでよ」は暗い印象がするのに対し、高校時代の「置いてかないでよ」はどこか藤野の表情も含めて明るい印象を受ける
これは京本という最高のパートナーを見つけたからであり、「置いてかないでよ」という周りの声が気にならなくなったからだろう
だが京本が成長したあまり、藤野は3つ目の「置いてかないでよ」に直面することになる
京本は藤野を元を離れ、美大に進学することに
2人は別々の道を歩む
可能世界に想いを馳せて
京本という最高の友達と離れたあとでも、藤野は描き続けていた
しかし無惨にも事件は起こる
京本は何の罪もないまま、作品をパクられたと一方的に主張する犯人に殺害される
これは京都アニメーションのあの一件を彷彿とさせるものだ
その後、藤野は現実に打ちひしがれたまま、京本の自宅を訪れる
そこで引きこもりだった京本を外から出したことを後悔し、きっかけとなる4コマ漫画(引きこもり世界選手権)を破り、その切れ端「出ないで」が京本の部屋へ入ってしまう
ここで2人があの時、出会わなかった世界線が発生する
その可能世界でも京本は美大に進学し、藤野は空手を続けていた
藤野のカラテキックに助けられた京本は、4コマ漫画を書く
背景ばかりの4コマ漫画を書いていた京本が、ここで初めてストーリーのある漫画を書く
「背中を見て」
その4コマは再び、元の世界線の藤野の元へ
これを受け取った藤野は京本の部屋へ入り、タイトル通りに振り返る(ルックバック)
視線の先には自分が京本の背中に書いたサインが、つまりは2人の色褪せることのない青春がそこにあったのだ
ここまでを整理しよう
藤野が自責の念に駆られ、京本を部屋から出すきっかけとなった4コマ漫画を破ることで、2人が小学校時に出会わず、大学時代になって初めて対面する可能世界が発生する
その可能世界の京本(空手キックで救われた京本)から「背中を見て」というメッセージを受け取る
この一連の流れは全て藤野の妄想という考察もあるが、自分はそうは思わない
なぜなら藤野はこの可能世界から間違いなくメッセージ受けとり、漫画を描き続けるからだ
おそらく空手キックで救われた京本は別の世界線で生きているのだろう
それでも自分は京本のいない世界で生きていくしかない
藤野は京本の生きている可能世界に思いを馳せながら、漫画を描き続ける
最後、エンドロールでの後ろ姿は藤本タツキのクリエイターとしての覚悟の現れでもある
総評
最後に総評とさせて頂きたい
TJ的評価は⭐︎4.2/5
才能が共鳴する青春映画でありながら、天才による悲痛のレクイエムでもある秀作
可能世界に想いを馳せながらそれでも描き続ける藤野、いや藤本タツキの姿はフィクションには現実を超越する力を秘めていることを示してくれる
奇しくも最近読んだ小説に今作の「ルックバック」と重なる台詞があったので、ここで紹介して結びとさせて頂く
いかがだっただろうか
今後も新作、旧作問わず気になった映画はどんどん紹介していく予定なのでスキ、フォロー、コメント等を是非
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では!