【図解】映画「オッペンハイマー」をネタバレありで完全解説-時系列&人物関係を徹底整理
どうもTJです
今回はクリストファー・ノーランの最新作(とはいっても日本では8ヶ月遅れなのだが)映画「オッペンハイマー」をネタバレありで完全解説していく
既にYouTubeなどでは自分よりも賢い方々が解説していると思うが、一般人代表としておそらくあまりされてこなかった視点での解説を試みたつもりなので最後までお付き合い願いたい
情報は公式のパンフレットを元に作成した
あらすじ・キャスト
監督:クリストファー・ノーラン
主演:キリアン・マーフィー
その他:エミリー・ブラント、ロバート・ダウニー・Jr、マッド・デイモン、マミ・マレック、フロレンス・ピューなど
改めて見るとハリウッドの最前線を走る本当に凄いキャスト達だが、今作は非常に多くの人物が登場するため、観客が識別しやすいよう脇役も出来るだけ有名な人たちで固めたかったというのがノーランの意図だそう
時間軸整理&人物整理
今作の混乱ポイントは2つ
一つは時間軸がいじられていることと、もう一つは人物関係がややこしいことだが、まずは前者の方から整理していく
時間軸は大きく3つに分けられる
・PART1 (オッペンハイマーの大学時代〜核実験、原爆投下、冷戦開始まで)
・PART2 (オッペンハイマーの聴聞会)
・PART3 (マッカーシー議員による赤狩り、公聴会)
PART1とPART2はオッペンハイマーの視点でカラー、PART3はオッペンハイマーを表舞台から消し去ろうとするストローズの視点でモノクロで描かれている
時間軸を図解すると以下のようになる
手作り感満載の図解で申し訳ないが、PARTごとにそれぞれ色分けしてみた
もちろんこれだけではまだ理解しずらいと思うのでテキストで情報を補いながら解説していく
PART1
PART1では、オッペンハイマーの大学時代からマンハッタン計画、ラストのアインシュタインとの会話などがオッペンハイマー自身の目線で生涯が描かれる
ここでポイントなのは、オッペンハイマーがマンハッタン計画の前に2人の女性と関係を持ったこと
1人は1939年に共産党員のパーティで出会ったジーン・タトロック
しかし関係は上手くいかず、1940年にはこちらも元共産党員で学者でもあるキティ(キャサリン)と二股をし、結婚することとなる
このようにオッペンハイマーはマンハッタン計画という国家プロジェクトに参加する前に、共産党員とのかなり密接に関わっており、これがPART3でも紹介するストローズによる赤狩りの標的の餌食となる
PART2
PART2はソ連のスパイ容疑をかけられ、聴聞会で詰められるオッペンハイマーが描かれる
この聴聞会が開かれた目的はオッペンハイマーの政府の機密情報アクセス権の剥奪であり、もっと言えばオッペンハイマーを表舞台から消し去ること
この聴聞会はストローズが仕組んだものであり、オッペンハイマーは非常に不利なフィールドでジーン、キティとの関係やパッシュに嘘をついたことなどを詰められることとなる
この聴聞会(PART2)の重要なポイントは、原爆投下後、誰がオッペンハイマーの味方なのか、敵なのかがはっきりする点である
ストローズと同様水爆を巡って意見が対立したテラーはオッペンハイマーを追い詰める供述をする一方で、妻のキティはたとえオッペンハイマーが複数の女性と不倫してようとも最後まで擁護的な姿勢(戦う姿勢)を見せ続けた
聴聞会の結果としてオッペンハイマーは国家から危険人物扱いされ、政府の機密情報アクセス権は剥奪
晩年までFBIの監視下という厳しい環境に置かれることとなる
それでも終盤(1963)には大統領から「科学者に与える最高の栄誉」としてフェルミ賞を与えられる
これが今作の時系列としては最終地点でもある
PART3
PART3ではストローズの視点からオッペンハイマーを追い詰める視点がモノクロで描かれる
※オッペンハイマーの聴聞会は1954年、ストローズの公聴会は1959年もいうことに注意
今作の人物関係においてストローズはオッペンハイマーの明確な敵である
今作はいわばわかりやすい1対1の構図になっているとも言える
しかしストローズは元々はオッペンハイマーと良好な関係にあり、実際に1947年にはオッペンハイマーを原子力委員会の顧問に推薦している
ではなぜオッペンハイマーの敵となったのか
理由となる出来事は大きく2つで
1947 アインシュタインとの会話
1948 オッペンハイマーが公聴会でストローズを揶揄したことが挙げられる
また水爆を巡っても、オッペンハイマーは原爆を作り出してしまった後悔から開発に批判的、消極的であるのに対し、ストローズはソ連に先を越されてはまずい、今すぐ開発すべきと意見は対立していた
この意見の違いが2つの出来事を機に表面化し、ストローズはオッペンハイマーを表舞台から消すことを決意する
ストローズは熱狂的な反共主義者のボーデンとマンハッタン計画でもオッペンハイマーのことを批判的に見ていたニコルズのパイプ役を務め、ボーデンにFBIへ告発書を書かせる
オッペンハイマーはそのことに対し、申し立てを行ったことでオッペンハイマーの聴聞会は開かれることに
その聴聞会の人選はストローズが選んだ人であり、記者も傍聴人など第三者の目線も通らない
いわば、全てはストローズの手の中で行われて、オッペンハイマーは狭い個室で非常にアンフェアな聴聞会に引きずり出されることとなったのだ
その聴聞会の結果は前述の通りだが、その5年後に今度はストローズが政府の商務長官として適切なのかという公聴会が開かれることに
争点はオッペンハイマーの聴聞会が果たして正当なものだったのかというもの
公聴会はストローズに有利なまま進んでいくように思えた
しかし、科学者のヒルの証言で展開は一変する
彼は、ストローズがオッペンハイマーをはめるために行った一部始終を暴露し、ストローズは土壇場で商務長官としての指名を逃すこととなる
※ヒルは出番こそ少ないものの、一貫して正義の人物として描かれている
オッペンハイマーを裁いたものが、今度は裁かれる側になる
このオッペンハイマーとストローズの1vs1はどちらもキャリアに傷をつける形で幕を閉じた
ラスト-アインシュタインとの会話
いよいよこの映画最大の謎でもあるラストに迫る
この映画の特筆すべき点は脚本だ
序盤にモノクロ(ストローズの視点)でオッペンハイマーとアインシュタインの会話を描く
この時にはストローズの視点なので会話の内容は観客にも分からない
観客に会話の謎を提示した上で、物語は2つの視点、3つの時系列で進んでいく
最後、この映画のラストでカラー(オッペンハイマーの視点)で会話の内容が回収される
その内容は「我々が世界を壊した」という重いものだった
アインシュタインはこれを聞き、失望のあまりストローズを無視して去ってしまう
ストローズは自分の悪口を言われたとこれを勘違いをし、後の聴聞会、公聴会へと発展していく
いわばこの会話は後の重大な出来事の連鎖反応を起こすものでもあったのだ
これを序盤に謎として提示しておきながらラストに回収するという脚本の凄まじさ
あくまで私見ではあるが、このラストによって、今作は映画史に残るクラシックとして名を残すことになったと思う
最後にこれらを踏まえてもう一度、この図解を見て頂きたい
ということでいかがだっただろうか
4000字近い文量になってしまったが、少しでも今作を鑑賞された方の手助けになれば幸いだ
もし間違っているところや不明点があれば遠慮なくコメント等で教えて頂きたい
もしこの記事が好評だったら次回はオッペンハイマーの感想と考察について投稿する予定
今後も旧作、新作問わずレビュー、考察していく予定なのでスキ、フォローなど是非
(今後の投稿の励みにもなります)
では!
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見返りは何もありませんが、結構助かります。