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若手のリクエストで開いた勉強会のタイトルがちょっと変~組織開発日記#12

OKR導入をきっかけとして、社内のあちこちで自主的な勉強会が始まりました。OKRは「とうてい達成できそうにないアンビシャスな目標」が奨励されていますので、スキルやノウハウの共有は必須です。なので、勉強会やワークショップの回数をKR(Key Result=主要な成果)に掲げるチームが広がったのです。


当社ラジオ制作部のOKR(実際のものとは少し変えています)

打ち合わせが難しい

当社でラジオ番組の制作を行っているチームでは、3つ目のKRに「年に10回勉強会をやる」ことを掲げ、たとえば以下のような勉強会を行いました。
 
「Adobeと上手につきあおう」(ラジオ番組の編集ノウハウをシェアする)
「特番の企画を考えよう」(キャリア10年未満の若手が対象)
 
このほかにもいくつもの「勉強会」が実施されたのですが、これって実は画期的なことなのです。僕自身もテレビの制作現場に長くおりましたが、ひとつの番組の中での教育や育成は行われたとしても、番組間のヨコの勉強会などが行われた記憶はありません。特に若手の作り手達は、忙しくて会社の研修は敬遠しがちなのです。
 
では、なぜラジオの制作現場でこれらが成立しているのか?
 
それは、勉強会の講師を人気の先輩社員クリエーター達がつとめるからです。

『ラジオじゃないと届かない』 宮嵜 守史著/ポプラ社

その中のひとりミヤザキ君は人気番組「JUNK」などを手がけながらラジオ制作部の部長も兼ね、ただでさえ忙しいのに、本まで書いちゃう才能の持ち主。そしてこの本は発売3週目、上野の書店の週間ランキングで、東野圭吾さんに次ぐ2位だった、という目撃情報ありの逸品なのです。(ウラは取ってません)
 
このミヤザキ君が自ら講師をつとめる勉強会は、若手社員からも人気抜群。これ一般の方を対象に開けばチケット販売とかできるんじゃないの?というヨコシマな考えもよぎったりするわけです。
 
一連の勉強会の話を聞いて僕が注目したのは、「打ち合わせが難しい」という勉強会です。若手ディレクターからの要望により企画されたといいます。
 
番組のオンエアや収録の前、出演者の方々が控え室に入ると、大抵の場合、まずはスタッフとの雑談が始まります。若手にとって難しいのは、「いつ打ち合わせを切り出すか?」
また、出演者の方に「マストコメント=演出上やスポンサーの都合上、絶対に言ってもらわないといけないコメントを、いかに伝えるか?」
 
こういったことは、企画・構成・演出や編集など、直接的な番組制作のノウハウではないのですが、実はとても大切なことなのです。一歩まちがえば、演者(出る役の人のことを業界ではこう呼ぶ)さんとの関係がギクシャクし、番組のクオリティにも影響しかねません。

これらの若手の悩みを、出演者の個性などを情報共有しながら、先輩ディレクター達がノウハウをシェアするといったような内容だったといいます。
若手の頃、飲み屋で朝まで打たれる(※打つ=説教する、叱責する、ネガティブフィードバックすることのTBS用語)ことで教育された僕にとっては、本当にうらやましい限りです。

さんまさんの楽屋あるある

「出演者との雑談中、いつ打ち合わせを切り出すか?」というのは、ラジオに限らず、もちろんテレビも含め世の中のディレクター共通の悩みだと思います。

明石家さんまさんと10年間ご一緒させていただきました僕としては、この悩み、ホント~~っに、よくわかります。さんまさんは、楽屋トークもとても楽しいからです。

スタッフからも人気のさんま師匠。控え室には、総合演出(この場合、私)以外に構成作家やロケDやADや番組のOBスタッフなど10人くらいの人(以降、ガヤと呼びます)が、さんまさんを囲むように座っています。
他局の楽屋にもお邪魔しましたが、どこも同じです。
ガヤの役割は、さんまさんを気持ちよくスタジオに送り出すこと。かつ、打ち合わせのサポートをし、間違っても邪魔はしないこと。であるはずなのに・・。
 
「さんまのSUPERからくりTV」など、レギュラーの収録時はまだいいのですが、普段とは違う「からくりTV2時間スペシャル」やお正月の「あんたの夢を叶えたろかスペシャル」など特番の収録では、時に中継がはいったり、スタジオの演出があったりと、事前にさんまさんに説明しておかなくてはならない段取りがたくさんあります。
 
そんな時に限って一部のガヤが、さんまさんのトークに、必要以上に爆笑するわけです。いや、たしかにおもしろい、けども。
 
最悪なのは、ようやくトークも何周かして、笑いもおさまってきて、そろそろ僕が打ち合わせを切り出そうとするタイミングで、別の話題を切り出すガヤです。オマエから切り出してどうすんのよ。
 
特番の収録日(大本番)にいたる一週間くらいは、ロケVTRなどの仕上げなどもあって、基本寝不足。当日なんかほとんど寝ていないか、最悪の場合徹夜明けです。こちとら半ば命がけで打ち合わせに挑んどるわけです。
そういう空気を読めないガヤに、打ち合わせのタイミングをズラされ、軽い殺意をおぼえたのも一度や二度ではありません。
 
あれ。昔を思い出して、やや取り乱してしまいました。話をもどしましょう。

ミヤザキ先輩のテクニック

OKRをきっかけとして、社内に広がった勉強会。TBSグループはコンテンツグループですので、特にこういったコンテンツそのものの価値を高める勉強会に、若手も積極的に参加しているというのは、本当に素晴らしいことだと思います。

一方的に先輩のノウハウを若手に伝授するだけではなく、演者さんとのコミュニケーションといった正解のないような悩みを皆でシェアし、先輩クリエーターたちも、時にはアドバイスし時には共に悩む。そういう「場」ができたことの意味は大きいと思うのです。
 
ところで、先ほどの若手の悩み。人気クリエーターのミヤザキ君なら、どうするか、あらためて聞いてみました。
状況を整理すると以下のようなことです。
 
出演者が本番前、スタッフとの雑談で盛り上がっている。出演者はこの会話のテンションのまま、本番を迎えたいと思っているが、演出上、説明しておかなくてはならないことがいくつかある。でも雑談は続く・・。まもなく本番なのに・・。
 
ミヤザキ君の答えはこうでした。
 
「僕はその場合、演者さんのトークに、わざと大きなリアクションします。な・る・ほ・どっー!とか、大声でウケるとか。そうやって、一瞬こちらに注意を引いて、できたそので、話を切り出すのです・・。」

さすが天才ミヤザキ。が、しかし・・・。

これはあくまでウチのミヤザキのやりかたです。人それぞれキャラってもんがありますし、「」も大事です。一歩間違えば、これは大事故につながりかねない荒技だということを、全国の悩めるディレクターの皆さんにお断りしておきます。

 
打ち合わせは本当に難しい、のです。


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