悪事の心理学 善良な傍観者が悪を生み出す
要約
・よくある誤解を理解する
私たちは、自分の場合はそうではないことを知っていたとしても、他人の行動はその人の本当の考えや感情を反映していると考える傾向があります。
そのため、他の人が緊急事態であるかのように振舞っていないときは、あの人は本心から緊急事態ではないと思っているに違いない、と考えてしまうのです。
学校の講義などの際に、教授から「何か質問はありますか?」と尋ねられた時のことを思い出して下さい。
もしかすると、あなたは聞きたいことがたくさんあったかもしれません。
しかし、あなたは挙手しないことを選びました。
どうして挙手しなかったのかを尋ねれば、あなたは、おそらく「馬鹿な質問をしていると仲間に思われたくなかった」と理由を答えるでしょう。
しかし、他の人はどうして挙手しなかったのかを尋ねれば、あなたはまったく違った理由を答える可能性が高いでしょう。
それは、「他の人は講義の内容を理解していたので、何も質問しなくてよかった」という理由です。
これは、行動における「多元的無知」の典型的な例です。
質問のとき、人は恥ずかしいから手を上げようとしません。
ところが、他の人が挙手しないのは質問がないからだと考えています。
その他の場面では、恋愛相手になるかもしれない人物に自分から関心を示すことに消極的な理由を、「拒否されるのが怖いから」とする一方で、その相手が自分に消極的な理由を、「自分に関心がないから」と考える傾向があります。
社会的な気まずさや拒絶されることへの恐れが私たちの行動する能力を妨げる可能性があるという知見は、その抑制が弱まったときには緊急事態に対応する意欲が高まる理由を説明する上で有用です。
悪事を止めるということは、単純に怪物を特定してその行為をやめさせればよいというものではありません。
善人が間違った選択をする要因を特定して、悪事の発生を防ぐ、あるいは少なくともその可能性を減らすことが不可欠なのです。