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すずか先生はベテランだけど
「あー、もう! ホントに言うこときかない」
すずか先生が休憩室に入ってきた。
すずか先生は保育士歴20年、いわゆるベテラン保育士だ。3歳児クラスの担任でリーダーをしている。クラスの子どもたちが言うことをきかない、とよく言っていて、大変なクラスだ、と、クラスの子どもたちのせいにしている。
「副主任」でもあるため、毎月の給与の支給額は38万円を超える。
保育士の給与が低いという人がいるけれど、命を預かると言っても医師のように健康でない人の内臓を扱ったり、手袋してマスクして白衣着用、全部破棄して帰宅するほど危険ではない。乳幼児期の子どもは確かに難しいけれど、子どもたちは大人より優れていて、諭され、物事の本質に気づかされ、人と人とが繋がる幸福感を得る。
今は処遇改善という名の上乗せされる賃金も出ていて、給与の合計はそこまで低くない。
それに、子どもが言うこときかない、ではなくて、すずか先生と子どもの意見が異なるだけ。そもそも、何故すずか先生の言う通りにしないといけないのか。もしかして、子どもは先生の言うこと、大人の言うことを聞くべきだ、とでも思っている?
子どもはお腹にいるときから母体とも意見が異なる。違う意見であることをどんどん明確に、大人に伝わるように言えるようになる。3歳児は、大人が一番腹が立つ言い方をあえてする。3歳児の自立したい欲求はそんな形で表出される。
子どもたちは、すずか先生を理解している。すずか先生は、子どもたちを理解しているのだろうか。