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転命2



夕暮れ 日の光がもったりと部屋に流れこんできた
あたためて溶けた蜜のようだ イメージが強すぎてミルクの匂いまで漂ってくる こんなことはいままでなかった 秋がこわい みんなできれば春とか夏の話をしていてほしい 準備がととのうまで永遠の話とかしていてほしい
わたしはまだそこへはゆけません

秋の気配2 空気が冷えて過去のことばかり克明に思い出す 夢や思い出や昔の話で頭がいっぱいになる

ちょっとこわいね ちょっとね 戰いが迫っているから
人生も物語もおれの準備と無関係に進んでいく それはもうわかっているんだけど こわくてたまらない


***
秋に死ぬ予感がある 秋に生まれたおれだから これからいくつか先の秋 なるべく先だといいのだけど  ウーンやっぱり秋がいいね いなくなったあとは みんなずっと覚えていてくれなくていいから 毎年秋に枯れて散る葉を見ておれのことを思い出してくれるとうれしいな
きっと上手に空を舞ってみせるから ここで一句

願わくば 枯葉の下にて秋死なむ 


***
おれはこれまで逃げ通しに逃げたとはいえない たしかに組織とか社会からなんとか逃れようという思いで生きてきた 勉強しなければといいながら低回趣味に逃れ勉強以外のことに夢中になったことは事実だ しかしその間たたかってきたこともまた事実である ずいぶん暗いところにいたが悪い気はしなかった よろこびも安らぎも孤独の中にあると知った そしてほんとの意味で孤独にはならない、なれないことを知った 出口はどこだ もう外にいるのか?おれは長い夢を見ていたんだろうか さまよい歩くうちにあまりにも暗闇が心地いいもので自分から望んでい続けてる気がすることさえあったが ここ数日で長年の迷いからさめたような感がある どうも辺りが暗くないのである 辻先生にたずねたい おれはついに則天去私の
境地に至ったのでしょうか そのように見えますか?
またお笑いになるだろうが本気でたずねたい

以前名作文学に描かれる人物とおれは何が違いますか?とたずねたことがある 恐れ多い気もしたが自分が彼らと同じ類の人間に思えてならなかった 英雄でも賢者でもない 非力で無知で愚かで頑固 自分というものがさっぱりわからずただ過剰な自意識に突き動かされるままフラフラして ......たとえば阿Qや断食芸人 クヌルプ デミアン(シンクレール) 代助 無名作家

先生は答えた 学問への興味 向学心だな てめーのもってきどころがわからねえってトコは同じかもな まあ阿Qほど悪いようにはならないだろうよ

そのあと恒例の禅問答がはじまって あらかじめ考えていた答えを一辺倒一点張り貫いたが逆にセッパされまくり 言い訳ぜんぶ言いくるめられ 自分のあさましさばかり際立つ結果となってフテくされてそれきり連絡していないが 近日中にお目にかかりたい 本人はこの位の人間は東京の到る処に居るものだと謙遜なさるが いやあれほどの人はなかなかいるもんじゃない そこら中いられたら困る

あとなによりブッダに会いたい 毎夜寝る前手をあわせている 直接会って聞きたいことがたくさんあります

あとおまえ(広義)にも聞きたいことがあります
おまえにのしかかる過去つてどんなものですか 時間の経過によっても癒されない心の傷 Time will tell??
血は止まりかさぶたがはり もはや痛くもない傷痕だけが残る そのうちいつおった傷かも忘れる 誰もそんなこと思い出したくないと思うけどおまえの悲しみがチラつくとき こんなにやさしいおまえを一体どれほどの悲しみが襲ったのか想像してゾクっとする そういうとき身体が透き通っていくのを感じる おれもおまえもいつか死ぬ身であることを思い出す そのくせ おまえはまるで傷ついたことなどないかのように 落ち込んだことさえ一度もないような素振りでいるからおれも歯食いしばってやる気になるよ すごいな 苦しかっただろう 一緒に走ろうか たのしく生きよう おれにはおまえのそういうものが見えていないと 少なくとも見えていないことには気づけないと まただらだらしてほんとにダメになる気がする
言いたいこと言ってくれ

1年か2年前、おれの生活がおれ自身のmadnessで成り立っていると言っていた頃はよかったな いまはどうだ
忘却と惰性で成り立っている おまえもそうですか そういうものですか? 信念のために逸脱せざるを得なかった 人が右に行くところを左に突き進んできた 結果おれの時間も空間も人のそれとは本質的に趣が異なってきているように思われた そこまではよかった いま正気に戻って平気でだらだらしてる  若さ 陶酔 力の意識 善良なる狂気…… やっぱり ねえ 狂ってなくちゃ


この場ではっきり申し上げておきたいことはおれは人生を肯定する立場にあるということです 誰かに褒められたいつもりもないし褒められなくてもやります 誰のためでもなく黙って咲く花です すきに生きて褒められるようなことはないが かといって責められる筋合いもあるまい 望んで生きてる ろくでもなくてもたのしくやってる 生きたくて生きてる 最終自分の選んだ道 しあわせはその道をおいて他に見つからないということ やりたいようにやっていればすべてがあるべきところに収まっていくこと そのように信じること 人生をたのしむこと うまくいかなかったことも思い通りにいかなかったこともすべて自分の人生として愛しているということ
それで ここからどこまでいくんだろうね?
ひとりじゃないから大丈夫だよ
おれとおまえ ひとりのふたり
見かけの孤独になってもひとりじゃない
さみしくないし どこへでもいける


ここまで書いて気づいたけど全然則天去私の境地じゃなかった 長年の暗闇を抜けてまた新たな苦悩の森に出たのだろう いいよ こけても立ち上がる 進むんだって
おれたちのリアル 16巻もでたことだしなあ
ありがとう 生きててくれて
終わりじゃねえぞ ここからはじまるんだ
駆け抜けよう 2024 おれたちの夏 無限

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