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母がゼリーを食べた

台風の最中、施設にいる母の面会にいってきた。

母は先月、病院で胃ろう造設の処置を受けたあと施設に移って、およそ1ヶ月になろうとしている。

母の退院日に施設玄関で咲いていたヒマワリ

私は「胃ろう」について、正直ほとんど知らずにいた。
母の主治医から、このままだと衰弱(死)してしまうからと「胃ろう」を提案され、あわてて調べたくらい。

調べてみて、いろんなメリットとリスクと、どちらもあることを知った。
なんでもそうかもしれないが。

母が救急車で運ばれた緊急時、人工呼吸器の時もそうだったが、今現在の母に、それをするしないの決断をする力がない。
よって、また私たちきょうだいでそれを決めることになった。

ネットで「胃ろう」と検索したらいくらでも出てくるけれど、ケアマネをしているお友達にも相談してみた。
その時に教えてもらった、とある病院の先生の説明がこちら。
私にはとてもわかりやすかったのでこちらでシェア。

これを読んで、点滴との違いもわかった。
胃ろうが生理的であること、そして母はまだ消化管がしっかり動いているから、胃ろうの処置が可能だ(できない場合もある)と知ることもできた。

私は、歳をとって足腰が弱っていくことや、認知症のことは、ある程度は想像していたけれど、口から食べる力が弱ることについて、あまりよく知らなかったし、想像することがなかった。  

母の介護を通じて、初めてその状況を経験した。

こんなに口からこぼすようになるなんて、
こんなに飲み込めなくなるなんて、
こんなにムセちゃうなんて、
こんなに自分で食べることができなくなるなんて、、、
全然知らなかった。

実家で介護していた頃の母の食事の記録

96歳まで長生きした祖母(母の母)は、最期まで、しっかりと口から自分で食事をしていたこともあるかもしれない。まさか母に限って、と思っていたのかもしれない。

だから今回、自分ごととして「もしも口から食べられなくなった時」のことを考える、よい機会を与えてもらったと思っている。


もう一つ、胃ろうのことで思い出したのが3年前に亡くした愛鳥、ばなちゃんの最期の時のこと。

食事が細くなり、ついに食べる力がなくなったばなちゃんに小鳥の先生が提案したのが、スポイトで’そのう’(鳥の消化管の一部)に柔らかい食べ物を送りこむ「強制給餌」だった。

母の胃ろうは、これに近いのだろうな、とその時のことを思い出した。
ばなちゃんと同じように、いつかそれすらも受け付けなくなる日が来るのだろう。

母は人工呼吸器までつけて、ここまで延命したのだ。だから私はもう何でもやったらいい、と思っていた。
幸いきょうだいたちも同じ気持ちだった。

いつかの施設の帰りにみたサルスベリ

そうして母は胃ろうの処置を受けて、お腹にチューブをつけて帰ってきた。

今は施設で1日に2回、看護師さんが胃ろう食のお世話をしてくれる。薬も胃ろうから。

とってもありがたい。
けれど、倒れてから2ヶ月の入院ですっかり寝たきりとなり、本人はわけもわからずに胃ろうで生き延びている母を見ているのは、かなり辛くもあった。

あんなに美味しいものが好きだったのに。
あんなにお料理が上手でいろんなものを作ってくれた母なのに。

でも、でも、
一時は、一生人工呼吸器つけて余生は病院で点滴暮らしかも?と言われたこともあったのだ。

これは夢みたいな回復なのだ。

切ない気持ちになると、そのことを思い出して、そうだ、そうだ、お母さんはすごいんだ!これはすごい奇跡なんだ!と思い直していた。

施設の帰り道で見つけたかわいいマンホール

その後、施設での胃ろう暮らし3週間が過ぎて、経過も順調なので、そろそろ嚥下のリハビリも始めましょう、ということになった。

そしていよいよ、今週から母のお昼に「ゼリー食」が始まった。

ゼリーといっても、コンビニで売っているようなものではない。
嚥下困難な人向けに作られた、手のひらにのるくらいの小さな栄養食品。

りんご味🍎

小さくても、ものすごくカロリーは高いらしい。
こういうものを、開発してくれた人がいるんだなぁ、と感動する。

そして今日、初めて実際に母がゼリーを口から食べる姿を見てきた。

優しい男性の看護師さんに、一口一口、スプーンで入れてもらう。
誤嚥のリスクがないわけではない。見ているのもドキドキハラハラ。

母は一口食べるたびに「おいしい」「おいしい」と声を出していた。

うれしかった!
お母さん、まだ「おいしい」を覚えていたんだ!

そばにいた次姉が、離乳食の始まった○○(0歳児の姉の初孫)と同じだ、といっていた。  

ほんとうだね。
おしめをして、ご飯を食べさせてもらって…
お母さん、赤ちゃんに戻ってしまったね。

それでも何でも、嬉しかった。

私(たち)がこんなに嬉しいのだから、お母さん、胃ろうしてよかったのだ。

この嬉しさを忘れないよう、イマの私の気持ちの記録。

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