まだ死ぬわけにはいかない
八代亜紀さんが亡くなった
病名を聞いてドキッとした
急速進行性間質性肺炎
私も同じ病気を罹患している
厳密には、特発性肺線維症
肺胞の隔壁が線維化する難病
炎症を起こしている状態を間質性肺炎という
特発性というのは、原因不明ということらしい
八代さんの場合は、膠原病がおおもとにあったと聞く
私の場合は、おおもとの原因が特定できないから
特発性なのだそうだ
この病気は完治しない
進行をいかに遅らせるか
それしか手だてがない
発症からの平均余命は、諸説あるが、おおよそ65か月
私の場合は、2017年4月に確定診断を受けたから
すでに、82か月が経過したことになる
十分に元は取れた?笑
いや、まだくたばるわけにはいかない
物事には順序がある
認知が進んだ高齢の母を見送ることが先だ
40年以上、仕事ばかりで家庭を顧みなかった
妻への恩返しは何もできていない
八代さんの訃報とともに
そんな思いが津波みたいに
いろんなものをごちゃごちゃに巻き込みながら
脳内に流れ込んできた
間質性肺炎は、ゆっくりと死んでいく病気だが
突然、前触れもなく、進行が早まることがあるらしい
急性増悪(きゅうせいぞうあく)
月に一度、主治医を訪ね、診察を受ける
「うん、変わりないね」
聴診器を通して聞こえる肺の音が
相変わらず濁っているとき
主治医はこういうのだ
そして必ず、別れ際に言う
「この病気は、突然悪くなるからね」
これは、ある意味、呪詛のようでもある、笑
まだ働ける年齢だが、
退職して主夫になることを選んだ
どこから聞きつけたか、
町内会の役員を引き受けてくれないかと
熱心な誘いを受けたが、
丁重にお断りした
外出は午後1時間ほど、
地元のスーパーへ晩ごはんの買い物に
週に一度くらいの頻度で、夜、客の少ない時間帯に
近所のモールの中にある本屋へ
テレビでお笑い番組を観て
面白くて、つい笑ってしまったら
それをきっかけにしばらく咳が止まらなくなって
死ぬかと思うほど苦しい
カラオケが好きだったのに
今は、ワンコーラスどころか、
2~3小節で咳込んでしまうので
口ずさむこともなくなった
まだ、やりたいことがたくさんある
やり残したことが、たくさんある
八代さんのご冥福を祈りながら
自分のことは、まだもう少し、生かしておいてくださいと
ついでに、八百万の神に祈っている始末
どこかで、まだ死ぬわけがない、と高を括っている自分がいる
でも、八代さんも、きっとそう思っていたに違いない
「この病気は、突然悪くなるからね」
主治医の言葉を反芻する
油断せずに
今日一日を大事に生きようと思う
八代さん、あなたの舟唄は、最高に沁みました
どうか安らかに
補注:
この記事は、2024年1月10日深夜に執筆しました
病気の進行とともに、
自身の内面や病気への向き合い方に変化が生じたときは、
その都度、記録を残しておこうと思います