子供のためのオルセー美術館(87)白い馬の息づかい/ゴーギャン・神秘の森で
あの馬は何色?
ここは南の島タヒチ、見たこともない草や蔦をかきわけて森の奥に入って行くと、どこかで水の流れる音がします。
見上げればどこも木の葉でいっぱい、もう空も見えないくらいです。
あそこに何かいるみたい。
小川で水を飲んでいる白い馬。
ひたひた、ひたひた、小川はずっと向こうから静かに流れてきます。
ゴーギャンは、こんな奥深い森にいる南の島の白馬を描きました。
でも、この白馬、どうしてこんな緑色をしているのでしょう?
あたり一面の苔や草、木の葉っぱをすかしてやっと届いたお日様の光が、白馬の体を緑にするのをゴーギャンは知っていたのです。
そして、そうっと頭を下げた白馬の影が、暗い青の水をちらちらとオレンジにすることも。なんかこの顔、かわいいね。
あそこには、白いユリと見たこともない不思議な花が咲いています。
ねじれた大きな枝をぐいぐいのばしているのは、南の島のハイビスカス、ブーラオ。その向こうには、馬に乗って静かに小川を上って行く人たち。
ゴーギャンは、この2頭の馬を上へ上へと描きました。まるで遠く小川にそってどこかに去っていくように。
そして、うす緑に染まった白馬と濃い青色の水に、オレンジやピンクの鮮やかな色。静かで不思議な世界をゴーギャンは描いたのでした。
Paul Gauguin
Le Cheval blanc 1898
ポール・ゴーギャン
白い馬 1898
お読みいただきありがとうございました。
ゴーギャンの下から上への連続的な流れで立ち上がる構図、そして馬の背、枝葉の形の曲線、絵から浮き出てくるようです。
緑色を帯びた馬、ゴーギャンには確かに白馬がこのように見えたのですね。
でもこれが白であったらどうでしょう。それはあり?また違う雰囲気の絵になったでしょうか。緑色が多すぎて売れなかった絵ですが皆様はどちらがお好き?
白馬はゴーギャンと親交のあった友人、巨匠ルドンも度々描いていますのでまた改めて取り上げます。
絵に出てくるブラオ、黄色い花をつける南国の花ハイビスカスの一種ですが、こんなうっそうとした木だったとは。ゴーギャンが度々描きますが、野生だったらもっとすごいですね。