見出し画像

子供のためのオルセー美術館(90)白馬と戦うもの・ルドン/天井のドラクロワから・ルーブル美術館(43)

空飛そらと白馬はくば


むかしのおはなしてくる白馬はくばは、そら自由じゆうけまわってどこにでもんでいけます。ほら、こんなふうに。

ルドンは神話しんわのおはなしを、ゆめなかにいるようなきれいないろのパステルできました。

白馬はくばたちは、そのひかりけてがり、


まっすぐうえけばくほど、そられやかないろになります。あおやエメラルドのみどりはきらきらかがやいてまぶしいくらい。


けれど、したほうではくら不気味ぶきみやみに、なにかうごめいています。


あの黄色きいろいしましまのまるいものは、いったいなんでしょう。


ルーブル美術館びじゅつかんたものは

ルドンは、わか学生がくせいころ、ルーブル美術館びじゅつかんでドラクロワのました。

天井てんじょう見上みあげたとたん、あっといきみました。
このひかりやみ

太陽たいようかみアポロンや白馬はくばたちはひかかがいて、勝利しょうりよろこびがあふれています。


ところが、暗闇くらやみには、おそろしいけもの恐怖きょうふくるしむ人。


ルドンはおどろきました。
やみ勝利しょうりしたひかりのおはなし恐怖きょうふよろこび、そのときのさまざまな気持きもちが、この一まい全部描ぜんぶかかれていたからです。
ルドンは、ドラクロワにならって、アポロンとうま神話しんわ何枚なんまいきました。


これはなに?

さあ、もうわかりましたか?
あのニョロニョロした黄色きいろいのは、トグロをいておそろしいヘビの怪物かいぶつピュトン。
アポロンのとどめのきんがささっている!

そして、白馬はくばのうしろ、かがやくオレンジいろの中には、太陽たいようかみアポロンがいるのかもしれません。


ルドンは、このおそろしいたたかいの勝利しょうりあとにやってくるよろこびやしあわせの気持ちを、パステルの色彩しきさい表現ひょうげんしたのでした。

ODILON REDON 1840-1916
Le Char d'Apollon vers 1910
Pastel et détrempe sur toile
オディロン・ルドン
アポロンの戦車  1910
キャンバスにパステル、テンペラ オルセー美術館蔵

学生時代、ルドンはルーブル美術館のアポロンの回廊の天井に描かれたドラクロワの絵を見て感嘆した。彼はこの主題について「闇に対する光の勝利だ。それは夜の影の悲しみと対照的な白日の喜びであり、苦悩の後の快感の喜びのようなものだ」と語っている。ルドンはここでは、テンペラ、パステルを組み合わせ、最も晴れやかな構図を描いている。

musée d’orsay 

Apollon vainqueur du serpent Python - Galerie Apollon
Eugène Delacroix  1850-1851 
大蛇ピュトンを倒すアポロン - ギャルリー・アポロン
ウジェーヌ・ドラクロワ 1850-1851
ルーブル美術館蔵

ピュトンはギリシア神話に登場するガイア(大地)が生んだ巨大な蛇の姿をした雌のドラゴンで言葉を話す才能を持っていた。 アポロンは怪物を探しにクリッサの谷に到着した。パルナッソスの荒々しい峡谷に足を踏み入れたが、そこは蛇ピュトンの隠れ家だった。母を迫害したピュトンを追い詰めたアポロンは、ピュトンを黄金の矢で貫いた。

本作の主題はオウィディウスの『変身物語』 (第1巻435-450行) から採られており、アポロン神が大蛇ピュトンを殺す場面が描かれている。ピュトンはデルフォイ神託所の見張り番で、伝統的にはの姿で表される。

wikipedia

 お読みいただきありがとうございました。
ルドンはモネと同じ年に生まれた画家でしたが、自然や現代生活を描く印象派には全く興味を示さず、内なるもの、目に見えない自分の中で感じたものを表現しようとしました。
ドラクロワの絵に見えるロマン派の画家が細心の注意を払って描いた馬車とギリシアの神は、ルドンのキャンバスには見つけることはできません。でも、よくよく見れば、オレンジの光の中にアポロンの姿を感じられた方がいるかもしれません。
この絵でルドンは、自分が感じているものを色彩だけで描き上げました。パステルの繊細さも見事ですね。
ドラクロワとルドン、今回はオルセー美術館とルーブル美術館から、ふたりの巨匠の作品をご紹介しました。

パステル
パステルは、顔料に粘土やカオリンなどの白色充填剤を混ぜたもので、結合剤(通常はアラビアゴム)は、色のついた粉をアマルガム化させる。使用するつなぎの種類と量によって、パステルの硬さが決まる。
パステルは、準備や乾燥の時間を必要としない「クリーン」な技法である。レオナルド・ダ・ヴィンチは、恐らく1499年にフランス人のジャン・ペレアルによって始められたと思われるこの「乾式彩色法」を最初に使った一人である。
このメディウムは時間が経つと壊れやすく、保存上の問題がある。ある種の顔料は光で劣化し、カビが発生し、ほこりは大敵である。また、振動に非常に敏感で、わずかな衝撃や傷が「パステルフラワー」を傷つけてしまう。そのため、ガラスで保護し、弱い光に当てなければならない。

musée d’orsay

オルセー美術館企画展2023   パステル・ミレーからルドンまで デモビデオ30秒

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集