究極になめらかなプリンの作り方
プリンは人によって固めだったりとろける食感だったりと好みが分かれるので、万人受けするレシピを出すのは結構難しいと思っています。
それに私自身が家で作るときは、今でも数十年前のオーブンレンジの説明書に書いてあった配合で作っていて、家のおやつとしてはそれで十分です。
ただ「なめらかな舌触りにすること」にはこだわります。
今回は卵黄が多めの配合でご紹介しますが、配合が違ったとしてもなめらかなプリンに仕上げるためのポイントは同じです。
卵白が余るのが嫌だったり、キリのいい分量で作りたい場合はお手持ちのレシピでもいいので、ぜひポイントを意識して作ってみてください。
材料と配合の話
プリンの材料は卵・砂糖・牛乳です。
(厳密に言えば水と型に塗るバターも必要ですが)
材料がシンプルすぎる分、少し作り方が違うだけで仕上がりが大きく変わってしまいます。
プリンは「卵を加熱すると固まる性質」を利用して作るお菓子です。
だから牛乳に対して卵の割合が多い方が固まりやすくなります。
「クレーム・ブリュレ」と言う表面をキャラメリゼしたお菓子があります。
クレーム・ブリュレは、簡単に言えばものすごく濃厚なプリンです。
プリンの材料が全卵・砂糖・牛乳のところ、クレーム・ブリュレの材料は卵黄・砂糖・生クリームで、作り方はほぼ同じです。
卵といっても、卵黄は加熱しても卵白ほどしっかり固まりません。
その反面、卵の味=ほぼ卵黄の味なので、卵黄の割合が多い方が固まる力は弱くても味は濃厚になります。
卵黄しか使っていないクレーム・ブリュレは、味が濃い代わりにしっかり固まらないので、その名の通り(キャラメリゼしたクリームの意)、クリームのような食感です。
プリンはある程度の固さが必要なので、基本的には全卵を使い、少し濃厚な感じを出したければ全卵+卵黄を使います。
このように材料が3つしかないのに割合によって濃さと固さが変わるので、色々試してみて自分の好みに合うレシピを使ってください。
すが入るということ
この記事では「いかになめらかな食感に仕上げるか」というのがテーマです。
それはほぼ9割方、火の通し方によって決まります。
プリン作りで一番多い失敗は「すが入る」ことです。
「すが入る」とは、プリンや茶碗蒸しで、気泡がたくさん入って蜂の巣のように穴がたくさんあいた状態のことをいいます。
すが入る原因は、加熱のしすぎです。
加熱温度が高すぎたり、長時間加熱すると生地の中に小さな穴がたくさんあいて離水し、ボソボソしてザラザラの食感になります。
すが入るとザラザラの食感になるので、なめらかな食感にするには、すが入らないように火を通すことが重要になります。
だからプリン作りでは、卵が固まる程度の温度で、かつ直接的に熱が当たらない、蒸すなどの方法で火を通します。
ただ、コンロを使って蒸し器などで蒸す場合、火加減や使う道具によっては思った以上に高温になってしまうことがあります。
だからこの記事では一番安定して失敗しにくい、オーブンを使って湯煎焼きにする方法にしています。
上の写真は鍋を使って中火で15分程度蒸したもの。
外側は完全に離水してボソボソですが、最後に火が通る内側の部分も、かろうじてプリンっぽくはあるものの気泡が入ってなめらかではありません。
すが入る原因のほとんどは加熱のしすぎですが、元々の生地に気泡が入りすぎていても火を通した時に気泡が残ってしまいます。
だから生地を作る時、卵はなるべく泡立てないようにします。
固さの話
材料の話で書いた通り、牛乳に対する卵の量で固さは変わります。
それに加えて、火の通り具合によっても変わってきます。
卵は加熱すると固くなるので、加熱してギリギリ固まったぐらいで取り出せば柔らかいプリンに、しっかり固まったところで取り出せば固めのプリンになります。
でも固めを目指すあまり、加熱しすぎると前述の通りすが入ってしまいます。
ちゃんとした方法で火を通した場合、しっかり固まった時点ではまだなめらかな状態です。
そこからさらに加熱し続けるとすが入り始めるので、固めが好みでも、固まったらすが入る前に取り出すようにします。
カラメルの話
カラメルは、焦がした砂糖に水を入れて作ります。
砂糖を焦がすときは砂糖だけを焦がしていってもできますが、時間がかかるのと、ちゃんと見ていないと「一部分だけ焦げて残りはまだ溶けてすらいない」という状況になりやすいです。
だから今回は、砂糖+水を焦がしたところに水を入れる作り方にしています。
最初に砂糖を少しの水に浸しておくことによって溶け残ることがなく、溶けるまでの時間も早いです(砂糖を浸すのに使った水は蒸発してなくなります)。
砂糖を焦がしただけだとカチカチに固まって、プリンが出来上がっても液状にはなりません。
それを少し緩めるためと色止めのために、砂糖を焦がしてカラメルにしたら最後に水を入れます。
砂糖の焦がし具合は、好みによって多少は変えることができます。
苦めが好きなら濃いめ、苦いのが苦手なら薄めの茶色の段階で焦がすのをやめます。
ただし焦がしすぎるとねっとりしすぎて、焦がし足りないとゆるくなりすぎるので、変えるとしても少しの差になります。
カラメルは慣れると目分量でも問題ありません。
でも最初の水が多すぎたらなかなか蒸発しないので、色づくまでにかなり時間がかかります。
最後の水が多すぎるとシャバシャバになりすぎて、焼く前に卵液と混ざってしまい、少なすぎると焼き上がってもカラメルが溶け切らず、型の底にこびりついてしまいます。
プリンの配合と作り方
分量
100ccプリンカップ5個分
<カラメル>
・グラニュー糖 30g
・水 10g(小さじ2)
・水 10g(小さじ2)
<卵液>
・卵 100g(Mサイズだと2個)
・卵黄 40g(Mサイズだと2個強)
・グラニュー糖 62g
・牛乳 320g
・型に塗るバター 適量
下準備
① 型にバターを塗ります。
ここでは無塩バターを使っていますが、マーガリンなど他の油脂でもかまいません。
カップから出さずにそのまま食べる場合(ココット型など)でも、バターを塗っておいた方が食べやすく、カップを洗うのも楽になります。
②湯煎用のお湯を準備し始めます。
プリンを焼くときは、オーブンの天板にお湯を張って湯煎焼きにします。
焼く時に沸騰手前ぐらいの熱さになっているように、作り始める前にお湯を沸かし始めておくと効率がいいです。
③オーブンを120℃に予熱します。
作り方
①片手鍋にグラニュー糖30gと水10gを入れます。
まずはカラメル作りです。
グラニュー糖30gと水10gを鍋に入れます。
水に浸かっていない部分があるとそこから先に焦げやすいので、火にかける前に全体に水を行き渡らせておきます。
内側が黒色の鍋だと焦がした時に色味がわからないので避けてください。
最後に水を入れるときに飛び散るので、なるべく深くて小さめの鍋を使うようにすると失敗しにくいです。
ここでは直径16cmの鍋を使用しています。
②鍋を中火にかけて焦がしていきます。
焦がすにつれてすごく湯気が出るので、必ず換気扇をつけてから火にかけます。
急ぐ人は色づき始めるまでは強火でも大丈夫です。
沸騰してしばらくすると、周りから茶色になってきます。
このまま加熱し続けると周りばかり焦げて真ん中は薄いままなので、時折鍋を傾けたり回したりして、全体の色が常に同じになるようにします。
ゴムベラで混ぜたりすると砂糖が結晶化して塊ができ、最後までそのダマが取れません。
道具を使わずに、必ず鍋を動かして自然に混ざるようにします。
③火を止めてから水10gを入れます。
いい色になってから火を止めると、余熱で思ったより濃い色になってしまう場合があります。
それを防ぐために希望の色の少し手前で火を止め、余熱で色づいたところで水10gを入れます。
水を入れるときは、はねるので顔を近づけないようにしてください。
入れ終わったらすぐに鍋を回し、全体が混ざって均一になるようにします。
ここでは濃いめにしていますが、苦いのが苦手な人はもう少しだけ早め(薄めの色)のタイミングで火を止めて水を入れてください。
水を入れてもカラメルと水が完全には混ざらない場合、ほんの数秒だけ加熱して底のカラメルを溶かしてから再度鍋を回すと混ざります。
でも火を止めてからあまりにも時間が経って完全に固まってしまっていたら難しいので、カラメルを作ったらブクブクしているうちに水を入れるようにします。
④カラメルを型に入れます。
ブクブクしているのがおさまったら、熱いうちに用意した型に流します。
オーブンに入れたら溶けるので、底全体に流す必要はありません。
大体5等分に入ったらOKです。
しばらく置いておくと表面が固まります。
ここで表面が固まらなければ色が薄すぎる(焦がし不足)か、目分量の場合は水の入れすぎです。
ちなみにカラメル作りがめんどくさいという人には、タブレット状のカラメルが市販されています。
1粒か2粒をカップの底に入れるだけなので、しょっちゅうプリンを作る場合はとても便利です。
型は布巾をしいた天板に並べておきます。
布巾は熱の伝わりを和らげるためと、滑り止めのために敷いています。
⑤卵を溶きほぐします。
卵と卵黄を、ホイッパーでボウルの底を擦るようにかき混ぜてほぐします。
慣れてきたら、⑦の牛乳を温めている間に行うと効率がいいです。
泡立ててしまうと焼き上がりにすが入ってしまい、混ぜなさすぎると濾した時に卵白が網を通らず分量が変わってしまいます。
泡立てず、コシをきる程度にしておきます。
⑥鍋に牛乳とグラニュー糖を入れます。
カラメルに使った鍋を洗って使うか、別の鍋を使います。
⑦火にかけて牛乳を温めます。
牛乳を60℃ぐらいまで温めます。
ここでの目的は砂糖を溶かすことです。
揺らした時に湯気が出るぐらいで火を止めます。
牛乳が熱すぎると卵と混ぜたときに固まってしまうので、もし目を離してしまって熱くなりすぎたら、少し冷ましてから次の工程に進みます。
⑧牛乳の一部を卵に入れて混ぜ合わせます。
一気に全部の牛乳を入れると、卵が固まったり均一に混ざりにくいので、まず少しだけ牛乳を入れて卵とよく混ぜ合わせます。
⑨残りの牛乳を入れて混ぜ合わせます。
残りの牛乳を全部入れ、しっかり混ぜ合わせます。
⑩濾して鍋に戻します。
濾すことによって卵白の塊が取れてなめらかな生地になります。
洗い物を増やさないように、さっき牛乳を温めるのに使った鍋に戻します。
⑤の時にちゃんとコシが切れていたら、網には卵白の粘りが少し残る程度です。
⑪カラメルの入ったプリンカップに注ぎます。
カラメルが固まっているのを確認してから、卵液を注ぎます。
今回の型だと、ふちスレスレ〜1mm下ぐらいの量になります。
表面の気泡が気になる場合は、食品用のアルコールを離れた場所からスプレーするか、バーナーで炙ると消せます。
⑪予熱したオーブンに入れ、天板にお湯を注ぎます。
天板にお湯を入れてからオーブンに運ぶのは危ないので、プリンカップを並べた天板をオーブンにセットしてから天板にお湯を注ぎます。
湯煎焼きではお湯を大量に入れる必要はないのですが、焼いている途中に天板のお湯が沸騰しないこと、全部蒸発してしまわない程度の量を入れることが必要です。
お湯がぬるすぎると蒸気が出ないので、沸騰しない程度で温かいものを使い、プリンカップの底から大体1~1.5cm程度の量を入れます。
⑫120℃で15~18分焼きます。
お湯を入れたら扉を閉めて、15~18分焼きます(柔らかめの仕上がりの場合)。
焼き時間は型の素材や大きさ、卵液の温度によって変わってきます。
大きい型・金属製以外の型を使う場合や、作業に時間がかかって卵液が冷めたりオーブンの温度が下がったりした場合は焼き時間が長くなります。
オーブンの設定温度は機種によって変わるので目安です(160℃ぐらいが適切な機種もあります)。
温度が高いと膜が張りすぎ、低いと時間がかかってすが入ります。
少し温度が高いくらいなら膜が分厚くなるだけで一応ちゃんと焼けますが、30分程度焼いても固まる気配がない場合は温度が低すぎます。
⑬焼き上がりを確認します。
プリンカップを揺らしてみて、表面の揺れ具合で焼き上がっているか判断します。
(明らかに液体で、傾けただけで表面の膜が破れるようならまだチェックする段階ではないのでもう少し焼きます。)
オーブンから出していいのは❶か❷です。
❸の場合はまだ焼けていないのでもう数分焼きます。
❶完全に固まっている
❷ギリギリ固まっている
❸真ん中がまだ固まっていない
まず❶のように、表面が全く揺れない場合は完全に固まっています。この状態でも舌触りは滑らかなので、固めでしっかりしたプリンがお好みならここまで焼きます。
失敗したくない場合もここまで焼くと確実です。
(この状態になるには、焼き時間は20分〜かかります)
ただし完全に固まった後も長時間焼き続けると、すが入ってザラザラの食感になってしまうので注意してください。
❷のように表面全体が揺れる場合は、ギリギリ固まっている状態なので、柔らかく最もなめらかな食感に仕上がります。
私が目指すのはこの状態です。
(動画では5:11〜)
❸のように中心だけ揺れて周りは動かない場合、中心部分がまだ固まっていない(=焼けていない)です。
「なめらかな食感のプリン」にするためには、❷もしくは、❶になってすぐオーブンから出すようにします。
⑭取り出して冷やします。
天板ごと取り出すとお湯がこぼれて危ないので、プリンカップだけ取り出して、天板は後でお湯が冷めてから片付けたほうが安全です。
生ぬるいまま長時間置くと菌が繁殖しやすいので、氷水を張ったバットに入れ、粗熱が取れたら冷蔵庫で完全に冷やします。
型から抜いてお皿に乗せたい場合は、スプーンの背でフチを型から剥がした後、側面にスプーンを差し込んで隙間を作ると、周囲に空気が入ってするっと外れます。
作業工程の動画です。
(説明テロップはないので上の作り方と合わせてご覧ください)