未経験☆執筆
日本時間午前6時半。今日も横浜の実家からイタリアにいるアンドレアとZoomを繋ぐ。noteのとある記事を画面共有して、僕は言った。
「たとえ独房に収監されたとしても、noteさえ開ければ月が替わったことだけは確実に分かるよ」
※この記事(上のリンクの記事ではなく、今あなたが読もうとしてくださっているこの文章)は、日本人の僕とイタリア人の友人アンドレアがイタリア語で交わした会話を、日本語に訳したものです。
会話のみで構成されているので、どちらの発言であるかを明確にするため、僕の台詞にはL、アンドレアの台詞にはAを、「」の前に付けてお送りしたいと思います。
A「今月からはマルコ・ポーロか」
L「僕、知ってた!」
A「へぇ。ネットで『イタリア』『13世紀末に活躍』って検索したらマルコ・ポーロが出てきたのか」
L「...違うよ! 『13世紀に活躍した、世界でも有名なあのイタリアの方』って聞いて、真っ先に思いついたの!」
A「そう。俺は『東方見聞録』読んだことないけど、君は?」
L「日本が出てくるところだけ、日本語訳で読んだことある」
A「...『マルコさん自身は日本を訪れていない』んだって。君が読んだ
部分は聞いた噂をもとに書いたんだ」
L「そうそう。なんかさ、イタリア人ってそういうやつ多くない? ジュリア・デ・レッリスも一冊も本を読んだことがないのに本書いたしw」
A「君も詩なんか読んだことがないのに詩集を出そうとしてるしな」
L「読んだことあるよ!『神曲』! まぁ、すげぇ適当に地獄篇を読んだだけだけど... それに、僕は日本人なんだから関係ないだろ」
A「...でも、『鷗外はイタリアの地を踏んだことがありません』って書いてあるよ」
L「www」
A「まぁ、みんなそんなものなのかもね」
L「『みんな』じゃねぇよ。優秀なやつは何をやっても優秀なの。予備知識とか経験がなくても、さも精通しているかのようにこなせるんだよ」
A「...あんまり調子に乗ってると、もう詩を作るの手伝ってあげないよ。言っておくけど、さっき君が書いた一節、あのままじゃ全く意味が分からないからな」
L「...いい感じになるように直しておいてください。明日でいいので」
A「『Per favore』は?」
L「...お願いします」
A「直してはあげるけど、第六歌の完成は週明けになりそうだね。君のことだから、週末は『即興詩人』を読むんだろ」
L「...まぁね。だってすげぇおもしろそうじゃん。Kaekoikさんが紹介する本は当たりが多いんだよ。この前読んだ『そのとき、西洋では』もおもしろかった。本の中で紹介されてた作品の所在地リストを作ったから、そのうち一緒に見に行こうな」
A「それは俺も楽しみにしてる。特に、日本の美術品は未知の世界だから...」
L「日本のやつを見に行けるのはまだ先のことだけど、ロンドンにあるやつは今年見られるといいな」
A「そうだね。感染症流行以降、なんだかんだで全く予定通りにいかないからな...」
L「まぁ、人生なんて、予定通りになるほうが稀だろ。でも、ほら、森鴎外は色々あったけど『9年かけて『即興詩人』の翻訳を終えた』って。想定外のことが起こっても、回り道しながらゴールに向かって歩き続けていれば、案外なんとかなるものなんじゃない?」
A「珍しく楽天的だね」
L「経験が証明してるからね。6年前、癌の手術後に投薬治療を始めたとき、治療期間の5年間はもう何もできないと思ったし、それどころか今まで積み上げてきたものも全て失うと思ったけど、そんなことなかったから。パフォーマンスが落ちてもやり方を変えればなんとかなるんだよ。でもね、目的を達成したいなら、ペースを落とすのはいいけど、やめるのは絶対ダメだと思う。前と同じようにできなくなって落ち込んだり、焦ったりするけど、"あんまりいいコンディションじゃないときでも続けられる方法" を見つけたら、それは後々 “絶好調のときに出せるクオリティ” よりも大事なものになるから... なんて言えばいいんだろ? チェスでいうと、ナイトとルークの交換っていうか...」
A「説明は下手だけど、言いたいことはなんとなく分かる。もっといいものが得られるから、多少の犠牲は気にするな的な...」
L「そうそう。9年の間には色々あると思うけど、やってみたいなら頑張った方がいいと思うんだよ。それに、逆に目標があったほうが、9年間ずっと元気でいられるんじゃね?」
A「俺もそう思う。それにしても、何だろうね、『「自分のペースなら9年弱かかる」やってみたいこと』って...」
L「『神曲』読破とか?」
A「そういえば、君は8年間で『カンツォニエーレ』を読破しようとしてるよね。でも、単純に計算しても、『カンツォニエーレ』で8年かかるってことは、『神曲』なら24年くらいかかるんじゃないか」
L「かかんねぇよ。『カンツォニエーレ』の時間設定が異常なんだよ」
A「...ん?」
L「...あ、いや、何でもない」
■こぼれ話(?)
こちら(↓)は、中西家の朝食時の会話です。誰の発言であるかを明確にするため、僕の台詞にはN、母の台詞にはC、弟の台詞にはSを、「」の前に付けて...以下同文。
N「ねぇ母さん、森鴎外ってトンネルを抜けると雪国だった人だよね?」
C「それ川端康成なんだけど。ウケるw」
S「お兄ちゃん、森鴎外は横浜市の国歌を作った人だよ」
C「市歌なんだけど。ウケるw」
N「えっ、森鴎外って作曲家なの?」
S「作詞担当に決まってるだろ」
230901