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【パロディ】神曲_②あらゆる希望を捨てよ<前編>

(約2,600文字)


地獄篇 第3歌より
Per me si va ne la città dolente,
se scrivo così spesso sul blog note…
Ignoratemi pur tranquillamente.

(日本語訳)
人々は苦しみの街へ行くだろうな、
noteにこんな頻繁に書いていたら...
どうか安心して、僕を無視してくださいね。
(スキ、コメントお気遣いなく...)


僕はダンテ。
...キーボードのテスト、よし。さて、それでは本編を書き始めることにしましょう。

*****

僕はダンテ。ウェルことウェルギリウスと地獄を旅することになり、古めかしい、でかい門の前に立っています。
そう。これが地獄への入り口。その側柱には、「ここへ入る者は、あらゆる希望を捨てよ」と書かれています。それを見た僕は、思わず声を上げました。
「あぁ! これ! 僕の部屋のドアに貼ってあるやつ!」

日本語訳: (ここへ)入る者は、あらゆる希望を捨てよ <ダンテ・アリギエーリ 地獄篇 第3歌>

自分は部屋の掃除も片付けも一切しませんので、入るなら汚いことを覚悟して入れよ、という意味を込め、横浜の実家にも、リアルウェルの自宅にも、同様のステッカーを貼ったのでした。

ちなみに、このステッカーは、イタリアのエミリア・ロマーニャ州にあるラヴェンナの中心街、下記➊「ダンテの家」で購入することができます。(フィレンツェではありません。お間違いなく!)
「ここへ入る者は、あらゆる希望を捨てよ」だけでなく、『神曲』に登場する様々な一節が書かれたものが売られていますので、ラヴェンナを訪れた際は、記念にぜひ。

さて、ラヴェンナ観光大使としての仕事も終えたことですし、本編に戻りましょう。

地獄の門を前にし、土産物のステッカーではないガチの「ここへ入る者は、あらゆる希望を捨てよ」を見て、僕は戦慄しました。
門自体がその向こう側のことを警告しているのです。悪い予感しかしません。
しかし、ウェルは落ち着いた様子でこちらを見つめ、
「ここでは毅然としていないと」と、僕の手首を、骨が折れるんじゃねぇかと思うくらいの力でつかみました。
敷居をまたぎ、二人で地獄へと入っていきます。中は、真っ暗でした。

時の存在しない暗闇の中に、絶望の叫びや激しい呪詛が響き渡ります。
僕は震えながら、
「誰があんなに叫んでるんだ?」とウェルに尋ねました。

「別の場所に連れて行かれるのを待っている、地獄へ落ちた者の魂だよ」

「...別の場所?」
低い声で再び尋ねると、ウェルは、あれを見ろ、と僕に促し、口を開きます。
「あの川の向こうから本当の地獄が始まるんだ」

少しずつ暗闇に慣れてきた僕の目は、不毛な地の上に何か黒いもの...そう、数えきれないほどの死者の霊が集まっている様子を捉えました。
叫ぶもの、泣くもの、もと居た場所に帰りたいと訴えるもの。見えない力に突き動かされ、川の岸辺に歩み寄るものもいます。しまいには、彼らは暗く冷たい水を見つめ、じっと何かを待っていました。

「これは、アケローン川。地獄にある最初の川だよ。俺たちを向こう岸へ通してくれる渡し守がいるはずだ」と、ウィルが言い終えた、まさにそのとき。黒い水面を滑るように、一艘の小舟が現れたのです。それを操るのは長い白髭を蓄えた一人の老人でした。
「地獄へ落ちた魂ども、タダじゃ済まさねぇからな! おれはお前らを永遠の闇へブチ込むためにやってきた! 二度と空を見られると思うなよ!」
老人はそう怒鳴ったあと、こちらに視線を移し、僕を凝視します。「おい、お前! 亡者どもから離れろ! わかったか!? ここに生者であるお前の居場所なんかねぇんだよ!」

僕は恐怖に満ちた眼差しをウェルに投げつけます。彼は渡し守に向かって、僕の代わりに、落ち着いた声で答えました。
「カロン、そう怒るな。ダンテの旅は天が望んだものなんだ。君には俺たちをアケローン川の向こうへ連れて行く義務がある」

すると、どうでしょう。渡し守は黙り込み、僕たちを舟に乗せてくれたのでした。船体が僕の重みで傾ぎます。
岸を離れたとき、カロンの目は闇の中で真っ赤に燃える炭のごとく、威嚇するように僕たちを見つめていました。
それにもかかわらず、マシンガントーカーのウェルは、何食わぬ顔で地獄について語り始めます。
「地獄は地面に陥没した漏斗のような構造をしていて、9つの圏に分けられているんだ。それぞれの圏では、それぞれの罪に応じた罰が与えられる」

地獄の構造図
ダンテの生家(フィレンツェ)にて撮影

「それ、本で読んだから知ってる! 第七圏からはさらに細かく分けられてるんだよね。ちなみに、僕は洗礼を受けていないから死後は第一圏の辺獄へんごく(リンボ)へ行くんだろうけど、キリスト教徒だったと仮定すると、第八圏のうちの一つ、第七のふくろへ行くんだ。そこの罰は、『蛇に噛まれて燃え上がり灰となるが、再びもとの姿にかえる』っていうやつなんだよ。フェニックスみたいでかっこよくね? で、お前は第二圏だから、『荒れ狂う暴風に吹き流される』... 洪水じゃなくて残念だったな。でも、お前は体重が100キロ近くあるから、暴風くらいじゃ吹き流されないだろうし、大丈夫そうだね」

「...そういう君は第三圏も経由しないといけないから大変そうだな」

「は? 僕が第三圏に行くなら、お前もだろ」

「俺は行かないよ。最近はちゃんと節制してるから...」

「まぁ、確かに。ビデオチャットしてるときに食ってるの、リンゴかガムくらいだもんね。で、ちょっとは痩せた?」

「...聞くな」

...このように、普通の人間は、普通に生きていたら大体みんなダンテのいう  "地獄" へ落ちます。
"Wikipedia『神曲』" には、階層に応じた罪と罰が載っていますので、ご自身の行き先を確認してみるのも面白いですよ。

さて、本編に戻りましょう...と言いたいところですが、ここまででなんともう約2,500文字に達してしまいました。
この話の続きは、『【パロディ】神曲(2-2/10)_あらゆる希望を捨てよ<後編>』に譲ることにします。


本編と関係のある、今日の短歌:
執筆が おもしろすぎて 週刊の 
つもりがきっと 習慣になる
241207


参考書籍:
Classicini La Divina Commedia (Gisella Laterza) Edizioni EL