イタリア滞在記[2]_5【友情の印】(2022.7.28)
昼食後、アンドレアが仕事に出かけた後、近所のスーパーマーケットへ行ってスイカとダークチェリーを買ってきた。
食べ終わった後はリビングのソファに寝そべって本を読む。
↑7月中旬、アンドレアは消防研修のため、東アルプスに一週間ほど滞在していた。その際、お土産として買ってきてくれたトレンティーノ地方、ドロミテ山塊あたりの伝説集。
「どの話も著作権フリーだろうから、この中からパクってパロディを書きなよ」とのこと。
二冊とも結構分厚いけど、所詮子供向けの物語だし、秒で読破できるな!と思って読み始めたところ、一話も読み終わらないうちに寝てしまい、その数十分後、ひどい腹痛で目を覚ました。
原因は絶対スイカだ。買った時から一人分の量でないことは薄々感じていた。
その後結構苦しんで、ようやく落ち着いてきた頃アンドレアが帰宅。まだ全快してないけど、夕飯食えるかな...と一抹の不安を抱いていると、彼はリビングへ入り、ソファに伏せた本の横に座る僕に寂しそうな微笑みを向けて、
「ただいま」と言った。
様子がおかしい。
「どうかしたのか」
"おかえり" 代わりにそう返すと、彼は口を開きかけ、すぐに閉じる。そして徐に、伏せてあった本を手に取り、それを膝に乗せながら僕の隣に腰を下ろした。
こいつはあんまり自分の悩みを話したがらないし、僕もわざわざそれを聞き出そうとはしない。数分間の沈黙が流れたのち、アンドレアが、
「ジェラート食べに行こうか」と、静かに言った。
ジェラート...だと?
よりによってこんな時に?今そんなの食べたら確実に腹痛をぶり返すだろ...
でも、こんなに寂しそうにしてる相手からの誘いを断れないよなぁ...
...よし。腹を括ろう。今こそ男を見せる時だ。
「Va bene」
努めて明るく答えたつもりだったが、少し声が震えた。
そんなわけで、車に乗り込み、近所のジェラテリアへ向かう。
例によって今日も暑いので、エアコンの効いた車内で食べる。二人とも半分ほど食べ終えたところで、アンドレアが口を開いた...
...そうだ、久しぶりに、あれ(↓)をやろう。
※ここから先は会話のみで構成されているので、どちらの発言であるかを明確にするため、僕の台詞にはL、アンドレアの台詞にはAを、「」の前に付けてお送りしたいと思います。
A「ルイージ(アンドレアの友達その1)とカルロ(その2)のことで、ちょっと...色々あって...」
L「ケンカでもしたの?」
A「いや、そういう訳じゃないんだけど、彼ら、あまりにも配慮に欠けるっていうか...そう思う事があって」
L「だったら付き合わなきゃいいじゃん」
A「でも、彼らがいなくなったら、誰と遊べばいいんだよ。本当の友達なんて数人しかいないのに...」
L「お前ばかじゃねぇの?本当の友達なんて数人しかいなくて当たり前だろ...っていうか、むしろ数人もいる方が稀だよ。それに、なにも絶交しろなんて言ってないじゃん。少し距離を置いて、本当にお前の友達かどうか見極めれば?付き合いがなくなって寂しいと思うならまた一緒に遊べばいいし、何も感じないならそれまでなんじゃない?」
A「君は人間関係に執着がないよな...」
L「ないよ。僕、基本的に一人でいるの好きだもん。言っておくけどさぁ、僕と一緒に過ごせるやつなんて滅多にいないよ?相当好きじゃなかったら一秒だって一緒にいられないもん」
A「ローリス...」
L「...なんだよ、触んな。このクソ暑いのにハグとかいらない」
A「君さ...」
L「...なに?」
A「なんか、すごい鳥肌立ってない?」
L「...立ってない。それより、はい、これ!友情の印に僕のジェラート半分あげる!とっとと食って早く帰ろう...っていうか、食いながら運転しろ。緊急事態だから」