続・タトゥーを入れたい
労働許可申請の結果がそろそろ出るんじゃないか...という時分から毎週、アンドレアは、自身が申請手続きを行った弁護士事務所や、全く関わりのない同様の機関に凸し、「申請者の中で結果が出た人はいますか?」と聞いて回っている。
先日は、とうとうダイレクトに労働許可証を発行している窓口を訪れ、予約制にもかかわらず予約なしで担当者と話をした。しかも、「来週また行ってみようっと♪」とか言っている。
しかし、どこでも言われることは全く同じ。
「結果はまだ出ていません。もうしばらくお待ちください」
※この記事は、日本人の僕とイタリア人の友人アンドレアがイタリア語で交わした会話を、日本語に訳したものです。
ほぼ会話のみで構成されているので、どちらの発言であるかを明確にするため、僕の台詞にはL、アンドレアの台詞にはAを、「」の前に付けてお送りしたいと思います。
L「もう待つの疲れた! 円形脱毛症も全然治んないしさぁ! 結果が出るまで絶対に髪の毛生えてこないと思う!」
A「気持ちは分かるけど、待つことしかできないよ。友達の弁護士の知り合いの弁護士と同じオフィスで働いている弁護士は、まだ何ヵ月もかかることだって十分にあり得るって言ってた。もしかしたら、君がイタリアに来てから結果が出るかもしれないね」
L「...それさ、労働許可が出ないんなら、まぁ別にいいとして、労働許可が出た場合って、一度日本に帰国して、その足で大使館でビザ取って、そのまままたイタリアへ戻れってこと?」
A「別に帰国したその足で大使館に行くことはないと思うけど...」
L「そういうこと言ってんじゃねぇんだよ。それにさ、労働許可が出ようが出まいが、支払った申請料6万2000円は戻ってこない訳じゃん? 労働許可を貰えるのは、ほとんど早い者勝ちで15万人。それに対して現時点での応募者数は69万人。つまり、ほとんどの人が提出した書類に目を通されることもなく申請料だけ払った、ってことだ。"6万2000×(69万-15万)" がいくらになるか知らないけどさ、政府にとってはすげぇ収入じゃね? そんだけ儲けてんだったらせめてまともに仕事しろ、って思うのは僕だけか?」
A「いや、俺も思う。でも、それと同時にイタリアがそういう国だということも分かってるから...」
(以下、フィクションです)
L「...もし髪の毛が生えてこなかったら、県庁で職員の財布を片っ端から盗んでやる。その金でトルコへ行って、植毛するんだ」
A「ローリス、職員は関係ないだろう。それより、来週県庁へ行って、君の "順位" が上がっていなかったら、担当者の頭に銃を突き付けて、『"介入" するか、自分自身と家族の命を失うか、どちらか選んでください』って言おう」
L「それなw 南イタリアじゃ近しいこと絶対やってるよね。でもさ、結局自分たちでやらなきゃならないんなら、やっぱり最初から(広義の)マフィアに頼んでおけばよかったじゃん」
A「君ね、提示された値段を覚えてるか? 6万2000円どころじゃなかっただろ」
L「だけど、今回の申請がうまくいかなかったら... プランBでは同じ金額がかかるよ」
A「金額は同じでも、少なくとも合法だよ」
(以下、ノンフィクションに戻ります)
L「僕は違法でも全く構わないけど。日伊間を行ったり来たりする諸経費を加味すれば違法の方が安上がりだし。それに、またグリエルモ・マルコーニ空港の出発ゲートに一人で入っていくことを考えると...」
A「良くない思考ルートになってきたな... ローリス、結果が出ても出なくても、その結果がどうであれ、君は秋にこっちへ来て、25歳の誕生日を迎えるんだ。もうプレゼントも用意してあるんだよ。俺の知る限り一番優秀な彫師に連絡した」
L「...彫師?」
A「タトゥーを入れたいんだろ」
L「...いいの?」
A「いいよ。でも、どこに、何を彫るか、しっかり考えないとな。この前言っていたみたいに、顔にピカチュウなんか彫ったら絶対に後悔するから...」
L「そんなこと一言も言ってねぇよ。頭に黒猫って言ったの」
A「それはダメだよ」
L「なんでだよ!」
(以下、フィクションです)
A「君はもうすぐ25歳にもなるのに、市場でスリをやっていた頃のあだ名を頭に彫るのがかっこいいと、本当に思ってるのか? それも併せて、よく考えたほうがいい。労働許可申請のことはもう忘れて、これからは今俺が言ったことだけを考えるんだ。いいね? さぁ、明日も学校なんだから、風呂に入って、寝る準備をしないと」
L「...学校じゃなくて仕事な」
(以下、ノンフィクションに戻ります)
その後、湯船でヴェロキラプトルや T・レックス、ギガノトサウルスなどの画像をアンドレアに送り付けていたら、
「一生残るんだから、いい加減に選ぶな!」と怒られた。
(追記)
Sedoka tattoo
Mi sento inglese 🇬🇧
Normale è il tatuaggio
Lo dice pure il saggio
Serve drenaggio,
se sagome son lese
troppo, non basta un mese…
240605