大好きな一冊に出会ってしまったときの、あの幸福感
偶然の出会いを大切にしたいと思っている。
膨大な数の本の中から、何のあてもなく運命の一冊と出会う、もしくは選び出す出すことって、なんて贅沢なんだろう。
そのとき、私は何を頼りにその一冊の本に惹きつけられているのか。
手に取るきっかけは、話題の一冊だとか、書店員のおすすめだったりもする。裏表紙のあらすじや、本の帯、表紙のデザインということもある。
しばらくそれを繰り返して、”ビビッ” とくる本は、必ずしも誰かのおすすめの話題作や、平積みにされた重版本・・・ではないことも多い。
時に、私は冒頭で決める。昨日選んだ本との出会いは、まさにそうだった。
最初の一文の美しさと儚さ。どうしてこんなに綺麗な始め方ができるんだろう、と一気に惹きつけられた。そして続けて2・3文読んで、「ああ、こういう感じ、なんか好きだな」と感じた時には、もう決めていたのだ。
そして、そういう直感は、当たる。特別大きな起承転結の「転」みたいなものがあるわけではないのに、読み出したら止まらなくて夢中で読み進め、読み切った。
自分のこと。家族の思い出。祖父母の家の造り。もう二度と会えない人や景色の記憶。昔好きだった人。
そういったものを、本を読みながら回想させられ、途中、文字がぼやけた。この作家さんの文章、好きだ~~と思いながら。
読み終わった時には、何というか、まるで美容院でシャンプーをしてもらった後のような、
または寝具を一式全て洗濯したあとのような、あの感じ。表現が難しいけれど、心を洗いあげられたような、清々しい感覚になった。
ああ・・・また大好きな一冊に出会ってしまった、という高揚感。でも、もう出会う前には戻れないという、心地よい寂寥感。
なにより、自分の本棚にそれを並べる幸福感。
これだ、、本を読むことの素敵さって、こういう感じだった。
本って、文章って、やっぱりいいですね。
お読みいただきありがとうございます。