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塾業界は生き残れるかな?10年で子どもが今より約3割減るんだけど。

こんにちは。Loohcs代表の嶺井です。

最近も、国立大学の学費値上げする説や、図書館や大学の研究室で予算が足りなくてキツいという話がじわじわニュースを騒がせていて、日本の凋落を見ているようで悲しい気持ちになりますね。

基本的には、日本国のマクロなトレンドを見る限り、良い話はあまりないというのが僕の見解なのですが、教育業界もエライ大変です。日本の凋落とは関係ありませんが、2024年上半期の学習塾の倒産も過去最多となっております。

今回、教育世代の人口動態データのざっくり集計を行いまして、今日は塾経営者が語る塾業界の未来の話をしようかなと思います。

出生数が100万人いるのは"2015年が最後"

日本の人口規模を把握する上で、僕は大体1世代100万人くらいで推移という感覚で把握してます。昔は200万人いたわけですが、そこから半減してもしぶとく予備校産業・塾産業は生き残ってきました。

ただ、こども(出生数)が100万人いるのは"2015年が最後"です。その後はだいたい3-5年ごとに10万人減る急落ペース。今までは10万人減るのに10年かかってたものが、爆速で減っていくのです。

2024年は、人口推移予測の中位推計を下回りそうなペースといいます。

今回は集計するにあたり、2023年の出生数の実績値に基づいて、中位推計から12%減らした数値を予想として採用し、塾業界に大きく関わる各教育世代の人口動態を確認していきたいと思います。

教育世代人口はどのくらい減るか?

以下、集計に使ったスプシです。表の右側で、真っ赤になっているゾーンがあると思いますが、そこは「子どもが急激に減るゾーン」で、いつヤバいか大変分かりやすくなっています。

2010年を1としたときの、教育世代の人口

スプシから読み取れることを整理すると以下のようになります。

  • 小学生世代は、2020年頃から急速に減少し、10年で25%減少。2030年には2010年と比べて4割減少する。

  • 中学生世代は、2025年頃から急速に減少し、10年で25%減少。2035年には2010年と比べて4割減少する。

  • 高校生世代は、2030年頃から急速に減少し、10年で25%減少。2040年には2010年と比べて4割減少する。

  • 大学生世代は、3回の減少期があり、2018年〜2023年で5年で1割減ったが、2025年〜2035年は10年で1割と、現在はまだ緩やか。その後、2035年〜の減少速度がおおむね倍になり、2045年までに10年で2割減少する。2010年と比べて4割減少する。

  • さらに、上記の約10年後(小学生世代なら2037年〜)から再びゆるやかに減少が始まり、10年で1割減った後、減少スピードが加速、10年で2割ペースでの減少が続く。2070年には2010年と比べて6割減少する。

予想より全然「速い」っペースになっているてのがマズいと思うんですよね。ゆるやかな変化であれば、ゆるやかに対応できますが、「速い」となると、無理矢理な対応だって必要になってくるはずです。

人口統計は「精度の高い未来予測だ」という話を高校生たちに話したことがありますが、まさか人口統計の「低位推定(最悪パターン)」に近づいていくほど下回ってくだなんて、コロナの影響があったとはいえ思っていませんでした。

塾業界、10年もたないかも?

そんな中でも、塾業界が生き延びてこれたのは、これまでの少子化の波を、大学進学率・通塾率・単価の向上で補い、市場規模は横ばいで耐え忍べたからですね。そう見ると、案外ぬるくやれてるっちゃやれてるマーケットです。

なんなら、集団指導から個別指導への流れが近年では一番大きいトレンドでしたが、新しい学び方に対応して新商品を投入できた会社は、しっかり伸びています。

ただ、それが続くのも2030年がラストイヤーかもしれません。このあたりから、こどもの数が急落することは確定してますので、「今と同じまま」ではいられないというわけですね。小学生や中学生を対象にした学習塾は、10年もたないかもしれません。

みんなどうやって対応しているの?

大手予備校組と大手個別指導塾の動き

集団指導中心だった大手予備校組は業態変化へのチャレンジを進めています。たとえば、駿台は個別指導塾やEdtech系企業にM&Aや資本参加を次々しかけています。個別指導なら単価上がりますし、それで生き残りをはかっている感じでしょうか。

まあ、個別指導マーケットを開拓した明光義塾、近年急成長したスプリックスあたりはたまったもんじゃないでしょうけど。そんな明光義塾は人材領域に進出したり、スプリックスのアプリ使った塾のFC展開を始めたり、多角化戦略や連携を進めています。

通信教育系マーケットの動き

通信教育マーケット(進研ゼミとかこどもちゃれんじとか)は、ベネッセが個人情報保護でやらかしたからか、市場がシュリンクしてます。(矢野経済のレポート読んだ時びっくりしました)

これを「通信教育より対人の方が良い、コロナでデジタル活用が進んで一周回って人間が民間市場にもとめられる」と読んでもいいですし(Z会はちょっと前に栄光ホールディングス買収したり、”Z会の教室”というリアル教室展開したりと、リアルにどんどん進出しています)、「ベネッセが抑えてた(寡占状態)マーケットがあいた」と読んでもいいと思います。

もちろん、そんな状態でベネッセが何もしないわけはなく、「緊急事態宣言」みたいな経営計画が出されました。
https://www.benesse-hd.co.jp/ja/ir/doc/library/yxJ4.pdf

ベネッセはソフトバンクと合弁してるClassi使って学校予算獲得にも全力、って感じでしょうか。実は介護の売り上げも大きいので、すぐにベネッセが潰れるみたいなことにはなりません。通信教育も昔の紙や冊子を配る事業から、デジタルに大きく変化しています。ただ、今後もおそらく事業変革(大胆な事業投資)が必要とされるからか、MBO(経営陣による株式買取)による上場廃止が進みました。ベネッセの決算報告資料は教育業界を調べる経営学徒にとっては必読資料だっただけに今後ir資料が見れなくなるのかなぁ、と思うと寂しいですね。

これから起こること

1)影響は民間教育市場にとどまらず、あらゆる場所で統廃合が進む

日経新聞の「子どもが消える特集」が大変面白いのですが、まず大学がやばそうです。①2040年に大学が「240校」余る(全体の3割)、②すでに私大の半数が定員割れしていて赤字転落した大学は3割にものぼるとのこと。

女子大や短大の募集停止や統合、地方私大の撤退もニュースにもなり始めています。(今、そういう選択ができるのは、まだ余裕がある大学なのかもしれません。募集停止するとしばらく収入減りますからね)

僕が聞いた大学担当者の口コミをかいつまんでも、それなりにブランド力がある有力校でさえ「指定校推薦で送られてくる学生の数が減った」「どうにか年内入学の総合型選抜を増やしたい」「教授たちが全力で(研究時間削ってブラックな働き方をして)、地元の学生を確保できるように足掻いている」なんて話まで届いちゃってます。

さらに、過疎化や人口減少による児童数の急減で、小学校もざわっているようですし、破綻しそうな高校の話もちょこちょこと耳に挟みます。

これで、10年で3割も子どもが減ったらどこも自助努力でなんとかなる範囲余裕で超えそうですね。小学校・中学校はまだ自治体が深く関わっているので、なんとかしていくのでしょうけど。

ということで、今後も、民間の塾はおろか、小学校から大学に至るまで廃止や統合が続出することは間違いないでしょう。

Loohcs志塾では、「いく価値のある大学ランキング」を作るついでに、定員数の集計もしてみたのですが(すみませんが、このスプシは元データ的に非開示です)、2045年には、いま793ある大学のうち、上位200大学で大学生世代の数を定員が満たしてしまう計算でした。ん、そうすると、下位600大学は潰れる計算?!という感じになります。

いま60%くらいの大学進学率が100%に近づいてようやく上位300大学くらいまでは生き残れそう、リカレント教育とかで社会人取れるかな・・・みたいな雰囲気ですね。

2)入試の機能性が落ちて高校・大学・会社でも「補習」が増える

続きましては、なのですが、大学も生き残りのために「出願者数が多くなるような軽量入試」を次々増やしたり、指定校推薦を拡大したり、高大接続協定を直接高校と結びにいったり、系列校を増やしたりと、いろいろなことをしています。

難関大学はおそらく、そこそこの難関大学ではあり続けるでしょうが、「入試の選抜性が落ちる(倍率が低くなる)」ことは間違いありません。日本の大学は「出るのは簡単だが、入るのは難しい」と言われてきましたが、両方簡単となると大変ですね。

先にあげた定員数集計に基づいて、Loohcs志塾が得意とする難関私大ゾーンの入試に目を向けてみると、以下のようになります。

  • 現在のGMARCH並の入試難易度を維持できるのは早慶上くらい(上位25%)

  • GMARCHラインで現在の日東駒専くらいの難易度(上位60%)

  • 日東駒専あたりで残り下位40%の大学生を取り合う(日東駒専・大東亜帝国ラインは一部ボーダーフリー大学出てくると思います)

  • その下の大学は潰れる?

機能不全待ったなしですね。

結果的に何が起こっているかというと、科目は履修して、卒業証書も受け取っているはずなのに、履修した科目が何も身についていない、なんてことだって起こります。いわゆる「履修主義の弊害」ですね。

さらに、学校教育の仕組みと現代人が大好きな"コスパ・タイパ"という効率主義的な動きは相性が最悪で、「最小の努力で卒業(入学)を得る」という行為は、「最小の学びで卒業(入学)を得る」ということになります。

ちなみに、僕も一度「九九ができない高校生」の指導に関わったこともあります。誰だよ中学の卒業証書渡したの。履修主義も大概だよ。

さて、大学が潰れ始める頃には、企業でも人不足が始まります。そこから「人的資本の数が足りなければ質で」という議論になって教育に予算がつく、とかにでもなればまだ良いんです。

良いシナリオとしては、入試制度が機能不全になったところで、高大接続が大きく進んで、大学も高校も(場合によっては企業も)一体となって子どもたちの学ぶ力を支える社会に移行することです。

そうじゃないと日本経済のアルゼンチン経済化がいよいよ見えるかも?って気がしてきますね。

Loohcsとしては、まあ塾として合格させ続けることを頑張ることは頑張るんですけど、おそらくそれだけでは未来がないでしょう。僕としては、引き続き教育サービスの質を、「人が人に向き合う」という本質に注目して高め続けて、2030年までに潰すにはもったいない塾としてポジションを築き、激変期に残存者利益が取れるようにしたいなと思っています。

それにあたって、ノウハウや学びのあり方についてはどんどん公開してしまって、世界との一体性を高めていけたらいいなあ、なんて思っています。

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あと会長の斎木くん、人口増政策の実現マジで頑張って・・・!!!!

[今回の記事担当]嶺井 祐輝
1991年生まれ。2016年に総合型選抜や推薦入試の対策塾を運営するLoohcs株式会社の設立に参画し、副社長就任。自身も教鞭を執りながら、学校事業の立ち上げと、Loohcs志塾の全国展開に貢献し、2021年より同社代表取締役社長

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