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とりあえず、ちがいはわかっている女
帰り道、大きな通り沿いにアジサイが咲いている。
つかれていたって、素敵なもののちがいはよくわかる。
花びらの形、
色味、
ちょっとずつちがって、その違いが美しい。
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花びらの形だけじゃなく、同じ株で色が変わっていくのも嬉しくなる。
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かわいい。
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強い色もある。
ちがいに気づいて、楽しめる幸せ。
首がゴリゴリだけど、嬉しい気持ちで電車に乗り込む。
家につき、夕食を出す。
昨日、夫とNHK『きょうの料理』を見ていて、「鶏肉のコチュジャン酢を食べてみたいね」となったので、さっそく作り、出してみる。
「帰り道のアジサイがキレイなんだよ。
花びらとか、色とか
よく見るとちがっていてね……」
「……。
アジサイはいいんだけど……
この料理……
鶏肉の“コチュジャン酢”ではないよね?」
……。
はい。ちがいますよ。
まず……
冷蔵庫にコチュジャンがなかったので、豆板醤を使いました。
豆板醤はコチュジャンとちがい、まろみのある辛さではありません。
塩味と鋭い辛さを弱め、子も食べやすいよう、酢は使わず、砂糖やみりんなどを中心に調整しました。
分量は、味見しながらテキトーです。
が……
それが、何か?
「えーー。
それって、もう、
鶏肉のコチュジャン酢じゃないじゃん」
「いえいえ。
こちらは、
鶏肉のコチュジャン酢をイメージし、
今あるものを最大限いかして作った
“オマージュ鶏肉のコチュジャン酢”
ですよ。
だまって召し上がれっ!」
その後、夫は、
「オマージュって便利な言葉だねっ!」
と皮肉を言いながらも、おとなしく食べてくれた。
とりあえず、花のちがいも、味のちがいも、ちゃんとわかっている。
わかった上で強行突破するのが、真にちがいがわかるヤツなのだ!