【それが好きだと叫びたい】お寺や神社で名もなき作品にキャッキャする
田舎の小学生だったわたしにとって、お寺は遊び場でもあった。
夏休みのラジオ体操、ガチの肝試し(夜リアル墓場を歩く&本堂でお坊さんが怖い話)、お祭り、はてはクリスマス会(!)まで、地域の子どもがキャッキャするイベントは、だいたいお寺の敷地内で行われていた。
このお寺には地獄絵があった。歴史があるものではなさそうだったが、なかなかに大きく、かつ細密で、子どもながらに「こわっ!」と思いながらじぃーーっとながめた記憶がある。「なんに使うんだ?」なナゾの仏具がたくさんあるのも興味深かった。
そんなこともあり、わたしにとってのお寺や神社は、“なんか気になる面白いものが並べてある場所”というイメージになってしまった。
そして、三つ子の魂は百までなのだ……
転職モラトリアムの最後になにをしたいか?
となった時に、
「お寺とか神社に行ったら、なんか面白いもの
見つかるでしょっ」
となってしまった。
調べるのもそこそこに出かけてみる。
目的のお寺の門前に近づくと……
うわぁ〜
すごくいい香りがする。
入る前から銀木犀の香りで幸せな気持ちになる。知ってはいたけれど、実際に植えてある銀木犀を見るのははじめて。甘いけれどすっきりと爽やかな香りに心が高鳴る。
徳願寺のお庭には、桜、梅、紫陽花などが行き届いた様子で植えられている。花が咲いたらどんなに美しいだろう。春夏秋冬、どの季節に来ても華やいだ気持ちになれそうだ。
さあ、この山門にはどんな装飾が……
はわわっ! 結構、細工がしっかりしている。真下に入り込んでにくきゅうをじっくり満喫する。門の正面中央には色付きの龍、サイドには獏も彫刻されている。
……。
あっ、
にくきゅうばかり見ている場合ではない。
山門といったら仁王像である。
仁王像は明治時代の排仏毀釈により、葛飾八幡の別当、法漸寺から移されたものだそうだ。
力がこもった硬い姿勢だ。これはこれで趣きがある。もっと別角度からも見れないだろうか? 動いてみると……
毘沙門天がいる! 邪鬼2匹をのしている!! もともと毘沙門天や鍾馗は好きなモチーフなので贔屓目はあるかもしれないが、これはけっこう良作なのでは……?!
しかし、いわれがまったく見つけられなかった。仁王像とは雰囲気がちがうけれど、一緒に移されてきたのだろうか?
ちなみに、向かいに大黒天もいた。が、この大黒様は風船のようにふくよかでキャラクターっぽく、なんだか雰囲気がぜんぜんちがう。
うーむ……
まぁ、どんな由来でもいいか。
だって、かっこいいからっっ!
どんな人が作った、どんな作品かはわからないけれど、とにかく、好きな感じでかっこいいの見つけて、ラッキー!! と、かっこいいを連呼しておこう。
山門のにくきゅうお獅子と同時代の鐘楼堂も見る。
歴史的な価値もさることながら、山門と鐘楼堂の装飾は、気持ち多めに盛りがちな感じが楽しい。
さらに境内を見て回る。十二支が掘られた觀心堂、明治期に建立された経蔵(回転式八角輪堂を内蔵)、宮本武蔵の供養地蔵など、見るべきところも盛り沢山。
※しかも、宮本武蔵の落款が入った書と達磨絵、円山応挙の幽霊絵を寺宝として所有しているのだそう。毎年11月16日に公開しているとのこと。見てみたい!
これは……鐘楼の龍もびっくりするくらい、見どころが鬼盛りだ!
さらに書くと……
徳願寺の周りは【寺町通り】で、お向かいも両隣も、裏もお寺だらけ。
どのお寺にも見どころがあり、もはや、書ききれない。
やはり、お寺には興味深いものが多い! 出かければなにかあたる!!
と、収穫の多さにホクホクしながら帰ろうと歩く道すがら、ふと、思い出してしまった……
「そういえば“算額”も
お寺にあるものだったかな……?」
算額というのは、数学の問題(美しい図形を扱った問題が多いそう)が書かれた絵馬の一種。江戸時代にブームが起こり、時代小説などで目にしたことがあり、気になっていた。
調べてみると、神社に奉納されたものが多いことがわかったのだが、近隣で古い算額を公開している神社は見つけられなかった。
うーん、でも見てみたい! 検索の幅を広げてみると……日本橋にある【福徳神社】に、和算研究家の方が新しく奉納した算額を見つけた。
思い立ったが吉! 翌日、出かけてみる。
都心の神社の様子にドキドキしつつ、目的は算額である!
現代バージョンとはいえ、本当に綺麗な図だ。
問題はさっぱり解けないが、作った和算の研究者のわくわくが伝わり、うれしくなる。
古の時代の人たちも、和算に精通していなくても、神社でこういうものを見かけたら「ぜんっっぜん……わからないけど、なんか綺麗だなぁ」と思っていたんじゃないだろうか。
ああ、やっぱり、お寺や神社のものを見るのは楽しい。
有名な作品でなくても、味があるものを見つけられるところが好きだ。
モラトリアムのトリを飾るのにぴったりの遊びを楽しんだ。