【短編小説】変わる勇気
満員電車に揺られる朝、窓の外は曇り空。
いつも通り、また一日が始まった。
人々が慌ただしく動き回る中で、
自分だけが取り残されたような気がして、
胸がざわつく。
電車の中でも、席に座っているわけでもないのに、なぜか心が重く感じる。
なんだか、
この世界から一歩引いて眺めているような感覚。
毎日の繰り返しが、
次第に自分を圧迫しているのだろうか。
会社に到着して、静かなオフィスに入る。
デスクに座り、目の前のパソコンを開く。
もう何度目か分からない同じような仕事を
こなしていく。
どんなに時間をかけても、
何か満たされることはない。
成果が出ても、
それが自分の力だとは思えなかった。
ただ、言われたことをこなしているだけのような気がする。
何かが足りない。
心の中でその「何か」を探している自分がいる。
そんな時、過去の自分を思い出す。
子どものころ、何をしているときが一番楽しかっただろうか。
**自分は何をしたかったのだろうか。**
思い返せば、昔から教えることが好きだった。
小学校の先生になりたかった。
子どもたちに何かを伝え、成長を見守る仕事。あの頃は、純粋にそのことだけを夢見ていた。
けれど、現実は違った。
大人になっていくうちに、「安定」という言葉が先に立ち、いつの間にかそれが自分の選択の基準になっていた。
高校受験、大学受験、就職。すべて消去法で選び、楽な道を選んできた。
やりたくないことを避け、不安を感じることをできるだけ排除してきた。
でも、次第にそれが自分を縛り、
自由を奪っていることに気づいた。
毎日の生活が空虚に感じるようになり、
自分が本当にやりたいことがわからなくなっていた。
それは仕事だけでなく、自分の人生そのものにも当てはまることだと感じた。
今の自分は、自分の意志で選んだ道を歩んでいるのだろうか、それとも誰かの期待に応えようとした結果、ただ流されているだけなのだろうか。
心の中に湧き上がる「変わりたい」という感情。
それが膨らむにつれて、このままでいいのか、という疑問が次第に大きくなってきた。
たとえば、今の自分が嫌いなわけではない。
けれど、この先ずっとこのままでいいのかと自問自答してしまう。
このままだと、私は何か大切なものを失ってしまうのではないかと、そんな恐れがいつも胸の奥にあった。
それでも、決して簡単ではない選択だ。
転職なんて、リスクが伴う。
今の生活を捨てることで、今まで積み上げてきたものを失うかもしれない。
それでも、あの時の自分が感じていた「子どもたちに教えたい」という純粋な想いが、今の自分に必要だと感じた。
自分を変えるために、何か新しいことに挑戦しなければならない。
その気持ちが強くなり、決意を固めた。
一度きりの人生だからこそ、後悔しないように生きたい。
他人の期待に応え続けるのではなく、自分の「やりたいこと」を大事にして生きたいと思った。
変わるためには、まず一歩踏み出すことだ。
だからこそ、私は決意した。
転職して、小学校の先生になる道を歩むことを。
その決意を胸に、改めて自分の今後を考える。
何もかもが不安でいっぱいだが、あの頃の自分が持っていた情熱を再び取り戻したい。
そのためには、今の自分を変える覚悟が必要だ。一歩踏み出した先に、きっと新しい未来が広がっているはずだ。
そして、転職を決意した夜、私は手帳にこう書いた。「自分らしく生きる」。
自分を大切にして、心から望む未来を作り上げるために、これから全力で走り抜けていこうと。
読んでいただきありがとうございました。
どんなに小さな一歩でも、勇気を持って踏み出せば、きっと未来は変わると信じています。
あなたの「変わる勇気」を後押しできたら嬉しいです。