【短編小説】若手飲み会

今日は部署の先輩と後輩、
若手メンバーで飲みに行った。

仕事が終わったあとの開放感と、
ほんの少しの緊張感。

飲み会は好きだけど、相手によっては気を使うこともあるから、どこか慎重に席に着いた。

最初は仕事の話が中心だった。

最近の業務のこと、ちょっとした愚痴、上司のクセについて。「あるある」な話題で笑いながら、
料理が運ばれてくる。

グラスを重ねるごとに、
空気がほぐれていくのがわかる。

そのうち話題は恋愛のことに移った。

「気になってる人、いる?」
「喧嘩する理由って何が多い?」
「バレンタイン、もらった?渡した?」


軽いノリの話題もあれば、
ちょっと真剣な恋愛観の話になることもある。

人によって価値観が違って、
聞いているだけで面白い。

恋人との考え方の違いに悩んでいる人もいれば、まだそこまで深く考えたことがない人もいる。

みんなの話を聞きながら、ふと考えた。

こうやって誰かと将来のことを話したり、
それぞれの価値観を知ったりする時間が、
やっぱり好きだなと。

誰かの悪口や愚痴を肴にする飲み会より、
こうやって前向きな話をするほうが、ずっと楽しいし、心に残る。

「〇〇さんは、どうなの?」

ふいに話を振られる。

正直、具体的にどうしたいかなんて、
まだわからない。ただ、今より少しでも前に進みたいという気持ちはある。

そう答えると、「いいね、それ」と軽く笑われた。

ふと気づけば、いつもの飲み会と少し違う。

普段なら飲み放題を頼んでお酒ばかり飲み、
気づけば3000円以上払っているのに、
今日は違った。

お酒はそこそこにして、ちゃんとご飯を美味しく食べながら、じっくり話をした。

会計を見て驚く。1人2500円ほど。安い。

こんなに満足して、こんなに楽しくて、
この値段なら言うことなしだ。

店を出ると、夜風が心地よかった。

少し酔いがまわっているけど、不快ではない。

どこか気持ちがすっきりしていた。

またこうやって飲みに行くのも悪くない。

いや、むしろこういう時間を大切にしたい。
 
そんなことを考えながら、駅へと歩いた。

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