本の記憶。『ドリトル先生航海記』
自分のなかの読書体験の原初の記憶をたどろうとすると、わたしの場合、この本にたどり着く。小学校二年生だとすれば、昭和30年のことである。
『ドリトル先生航海記』。
この本に初めて出会ったのは、たぶん、小学校二年か三年、8歳か9歳のころ。
わたしはまだ、長野県の伊那谷の小学校にいた。天竜川沿い、下伊那郡川路村川路小学校。いまは飯田市に併合されている。クラスの担任の先生が授業時間の合間に教室で朗読して、聞かせてくれた。そのときに読んでもらい、なんて面白いんだろうと思って、あとから