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書評

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読書記録、しっかりした書評からメモ程度まで形式は統一していません。ネタバレ多。
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2020年11月の記事一覧

#30 書評・『華氏451度』 Ray Bradbury

 序  受動的なことは概して楽であり、時にそれは快楽そのものだ。それは考える必要が無いからである。考えるという能動性に訴えかけない、あるいはそれを阻害するような享楽は、現代社会よくに議論される問題だ。本を読むという行為は、考えるきっかけの種をくれる。それはそういった快楽主義を乗り越えて現在の周辺に存在する惨禍を直視することである。逃避することではなく。  この本は1953年に書かれたものだが、その世界の設定はまさに現代に向けたものであると言えよう。ディスプレイからの極彩色の刺

#27 書評・"Miriam" by Truman Capote

 ぼくは、明るい物語を読むことができない。詳しく言えば、読んでいても面白いと感じても感動したりすることが少ない。暗いアンダートーンを含み、人間の非合理性や狂気、疎外や妄執を扱ったような作品に、よりリアリティを感じる。それは自分の内面が共感したがっているのかもしれない。たとえば家族での幸福や恋愛を扱ったような求心的ともいえる物語より、ディストピアやある種の狂気を扱ったような題材から遠心的に描かれる物語の方が、ぼくという主体が接近しやすいのだ。内向的な語り手のほうが、読みやすいと