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ある地名の風景

陽春の雲渦巻く北十間川-押上    oshiage-2

青森に”オシアゲカラ”という言葉があるそうです。
これは川の増水時に泥や土が集まって、
岸や川の中に堆積した場所のことだといいます。

もちろん、青森と東京を一緒にすることはできませんが、
私は”押上”もこれに似た意味の地名だと思います。

つまり、「押し上げてくる」ものの正体は
川の水だと思うのです。

全国には押切、押立、押水、押出などなど
堤防が決壊しやすい場所につく地名が多くあります。

おそらく”押上”もこの仲間だろうと・・

どこの川が氾濫したのかというと
もちろん当時の大川、
スカイツリーから西へ1キロも行かない場所を流れる隅田川です。

駅のすぐそばを北十間川が流れていますが、
この川は17世紀中ごろに掘られた掘割です。

ですから、もっと昔に生まれたであろう
”押上”という地名にはつじつまがあいません。

そもそも”押上”の地名が生まれた当時、
いったいどこを指していたのか分かりません。

今でこそ隅田川から離れた場所に押上の町名がありますが、
たとえば今から500年も昔には川の流路も違っていたでしょうし、
今の町名にはまったく関係ない場所に生まれた地名かもしれません。

それから、押上を含め、
墨田区の北側は向島や京島の地名があります。
さらに、戦国時代には
同じあたりに牛島という地名があったことがわかっています。

一般に”島”がつく地名は、
周囲より多少高くなっていて、
洪水でも冠水せずに島のように見える土地につきます。

また、押上から3キロほど上流に隅田川神社があり、
ここは水神様で有名です。
水害に苦しむ地域では必ず川のそばに水神様を祀ります。

これらを考えると、
やはりこの一帯は大昔から
川の氾濫に悩まされてきた地域なのでしょう。

押上、向島、牛嶋神社の牛島など、
隅田川の水害と関連する地名なのかもしれません。

(墨田区押上)

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