西村 文

日本の地名と風景をこよなく愛するartist。 ❝そこはか❞となく綴る地名のエッセイと風景画集です。

西村 文

日本の地名と風景をこよなく愛するartist。 ❝そこはか❞となく綴る地名のエッセイと風景画集です。

最近の記事

ある地名の風景

鑓水の白いゲート     yarimizu 私が住む多摩丘陵にも 面白い地名がいろいろあります。 その中の一つが八王子の”鑓水”。 初めて見るとちょっと読めない地名ですが、 「やりみず」です。 町田との境界近く、丘陵の中のひっそりとした地域で 今は新しい住宅が増えましたが、 幕末から明治にかけては”絹の道”の途上でした。 絹の道とは、養蚕が盛んだった八王子産の生糸を 世界に輸出するため、 横浜へ向けて運ぶための道でした。 ところで、鑓水の”鑓”は、武器の槍と同じ意

    • ある地名の風景

      ”鼠”という地名     nezumi 今回は、日本地名研究所の所長だった 谷川健一の著書「続日本の地名」より 鼠の地名を紹介したいと思います。 「鼠はもともと不寝見(ねずみ)のことであり、 不寝番の役人が見張る番所の意味である」 と一志茂樹は唱えている。(「地方史の道」)。 語呂合わせのようだが、鼠地名のうち、 いくつかの例に限っていえば、 その説が妥当であることが証明される。 長野県北安曇郡松川村鼠穴も古代の「不寝見」、 すなわち見張りに由来しているという説がある

      • ある地名の風景

        代田の空と突き抜ける環七     daita-3 「地名の研究」といえば 日本民俗学の父と呼ばれる柳田国男ですが、 数多い著作の中に、”代田”について触れたものがあります。 前回に挙げた「巨人伝説」に関連して 「ダイダラボウの足跡」という短編が残されています。 これによると、柳田は実際に代田を訪れており、 「代田橋から南東に五~六町の場所に足跡とおぼしき 窪地があった」と記しています。 これはたぶん大正の末期ころだと思います。 現在、環七から東へ少し入った代田6丁目

        • ある地名の風景

          柳が風にゆれる代田の緑道     daita-2 清々しい一日。新しくきれいな緑道を歩いてきました。 小田急線下北沢駅から世田谷代田駅までの間ですが、 この道はもと小田急線が走っていた線路跡。 電車の地下化にともない、 おしゃれなお店が並ぶ緑道になりました。 ところで、”代田”という地名については 以下の伝説があります。 豪徳寺にあった世田谷城は 中世以来、忠臣蔵で有名な吉良上野介の先祖にあたる 吉良氏が代々の城主でした。 しかし小田原の北条氏が滅ぶと吉良氏も廃れ、

          ある地名の風景

          世田谷代田、秋の午後     daita ちょっと前に 「ラム」というアイスランド映画を見ました。 主演は「プロメテウス」のノオミ・ラパス。 ラムとは、ラム・マトンのラムで羊のことなのですが、 なんと羊人間が登場するダークファンタジー。 ちょっとびっくり(笑) ストーリーも良かったけど やはり私としては 寒々と茫漠なアイスランドの風景が心に刺さりました。 北ヨーロッパの風景とは無縁ですが 小田急線に「世田谷代田」という駅があります。 駅の周りは「代田~丁目」という

          ある地名の風景

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          日本橋に秋雨     nihonbashi 夏が過ぎて初めて肌寒いと感じた雨の日。 久々に日本橋を訪れたら外国人観光客がいっぱい。 真上を通る高速道路は何とかならなかったの? そんな顔して見上げてたような・・(笑) 「お江戸日本橋七つ立ち・・」 日本橋は、徳川家康が江戸城東側の海岸を埋め立てて 最初に架けた橋とか。 その後に整備された五街道の起点でもあります。 橋の名に”日本”をつけたのは 「江戸の真ん中にして、 諸国への行程もここより定められるゆえ」 当時から、た

          ある地名の風景

          ある地名の風景

          秋に向かう御殿山通り-品川 shinagawa-3 "しな”と言えば、”信濃”をはじめとして どういうわけか長野県でよくみかけます。 更科、蓼科、埴科、倉科、藁科・・ どちらかというと東日本に多い印象ですが 他にも仁科、保科、山階、片品などがあります。 一般に”しな”は坂とか傾斜地につく地名だと言われています。 「しなる」という言葉がありますが、 これは「折れずに曲がる」「たわむ」などの意味なので、 これとも関係がありそうです。 これが本当で、 ”しながわ”が目黒川

          ある地名の風景

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          品川橋に秋の空     shinagawa-2 ”品川”という地名はとても古く 初めての記録は平安時代の末、 源頼朝に関係する文書だといいます。 ”しながわ”の語源に関する説もたくさんありますが、 私がちょっと気になるのが 「品川は”目黒川”の古い呼び名」というものです。 目黒川は以前に私も描きましたが 世田谷の奥にあるお寺の池が水源で、 ここ東海道品川宿の先で海に出ています。 昔、目黒川は”品川”と呼ばれていたのでしょうか? 江戸時代の地誌に書かれているのですが 他

          ある地名の風景

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          品川埠頭のコンテナパレット     shinagawa 朝晩過ごしやすくなったと思ったら、 涼しいを通り越してちょっと寒い感じも。 「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったものです。 先日久しぶりにお台場に行ってきました。 そこで発見が一つ。 いわゆる”お台場”は何区なのか・・ 私は長らく港区と江東区が半々くらいかなと思っていたのですが 地図をよく見ると、9割がた江東区なんですね! 港区は一番観光客が多いフジテレビやお台場海浜公園の周囲だけ。 そしてもう一つ、 ”ゆり

          ある地名の風景

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          夏草踊る間家の電柱    makka-3 ここ三戸町の”間家”は馬淵川が大きく蛇行し、 谷を穿つ河岸段丘の上にあります。 ”まっか”と聞いて私がまず頭に浮かんだのは 北海道の”真狩村”(まっかり)でした。 私がもっとも信頼するアイヌ語地名研究家 山田秀三の「北海道の地名」を紐解くと 真狩は「マク・カリ・ペツ」で 「奥の方を回る川」とあります。 真狩川は屈曲が多く、この名で呼ばれたと。 東北の北部には北海道同様、アイヌ語の地名が散在しています。 このあたりにあっても不

          ある地名の風景

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          間家の森の小さな祠     makka-2 知り合いから聞いた岩手の”まっか”さん。 漢字にすると”真下”さんだそうです。 育った町には”赤真下”(あかまっか)さんもいたとか。 どう聞いても色の話をしているような・・ 真っ赤?赤真っ赤? それで訪ねてみたくなったわけです。 苗字があるなら地名もあるかもと・・ でも残念ながら その町では”まっか”という地名を見つけられませんでした。 そもそも”まっか”という地名が あるかどうかもわかりませんし、 あったとしても地元の人

          ある地名の風景

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          間家を走る青い森鉄道     makka 灼熱の東京から逃れて ここは青森県三戸町。 町の名は「さんのへ」です。 岩手から青森にかけて 一戸(いちのへ)~九戸(くのへ)まである謎の地名ですが 四戸(しのへ)だけは 江戸時代になるころには消えてしまったようです。 でもこれらの地名、一筋縄ではいきません。 また別な機会に訪ねて歩きたいです。 この絵、あまり真夏の風景には見えませんが(笑) 下を流れるのは、いつか取り上げた馬淵川。 今まさに鉄橋にさしかかったのは ”青い

          ある地名の風景

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          真夜中の龍土     ryudo-2 龍土、龍土と言うたびに楽器の”リュート”を思い出します。 ギターのような、琵琶法師の琵琶のような・・ 古い楽器のせいか今ではオーケストラでも出番が少ない ちょっとマイナーな存在・・ まぁ、そんなところは”龍土”と似ているのですが(笑) 江戸時代の初め、今の六本木あたりは”龍土村”でした。 そして次第に民家も増え、 元禄のころには”龍土町”になったといいます。 では、中世やもっと古い時代から ここに”龍土”という地名があったかという

          ある地名の風景

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          六本木龍土の十字架     ryudo 前回の乃木坂の続きみたいですが、 うろつきついでに 乃木坂の南隣、六本木まで足をのばすことに。 昨年から私も日傘男子デビュー! ちょっと恥ずかしかったのですが、 使ってみると驚くほど楽! 遮光率99%! 馬喰町の小宮商店ありがとう(笑) 日傘のおかげで長時間歩き回り、 めったに来ない六本木で ”龍土町美術館通り”という標識を発見。 美術館は近くにある新国立美術館のことだとして ”龍土町”? ここ一帯は六本木1~7丁目までで、

          ある地名の風景

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          乃木坂に紅い花     nogizaka たまには国立新美術館にでも行ってみようかと思い立ち、 千代田線で乃木坂駅下車、 地下鉄からの専用入り口にたどり着くと 「本日休館」の文字! あー猛暑の中せっかく来たのにー 仕方なくそのへんをうろつき、 赤い花咲く乃木坂風景に出会いました。 低い木の枝に小さな赤い花。 キョウチクトウかな・・たぶん。 この暑さに花もちょっとしおれぎみ。 乃木坂というと 赤坂や六本木に挟まれた繁華街をイメージしますが、 マンションが多いものの、ど

          ある地名の風景

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          海風のムーラン-御前崎     omaezaki-2 ゴッホやルノワールが描いた ”ムーラン・ド・ラ・ギャレット”は、 御菓子に使う小麦を挽くための風車とか。 日本の海岸に多い風力発電の風車を ”ムーラン”と呼ぶかどうかは定かでありません(笑) 前回、岬の周りに神社はないと言いましたが、 たった一つ、駒形神社がありました。 御前崎について、江戸時代の国学者賀茂真淵は 「汐干れば馬の背の如く数々見える、 人々は七十五里の駒形と言いならし 神々を駒形明神と申す」と言ってい

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