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ある地名の風景
四尾連湖に咲く人知れずの桜 shibire
山梨県は甲府盆地の南、市川三郷町の山間に
四尾連湖という湖があります。
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山の中によくあるダム湖ではありません。自然にできた湖です。
成因やできた時代など、よくわからないそうですが、
小さいながら、山々に囲まれてひっそりとした佇まいです。
もちろん、私が興味を持つのはその名称。
四尾連湖は「しびれこ」と読みます。
「シビレンコ」ではありませんよ!ロシアではないので(笑)
湖がある地域を“四尾連”というらしいので、
そこからの名称だと思っていました。
しかし、土地の話では「しびれるくらい水がつめたいから」
という説明がなされています。
これは、いわゆる地名説話で
あまり信用できないと思っていますが、
もし本当だとしたら、
しびれるくらい冷たい水の四尾連湖があるので
その一帯を四尾連と呼ぶようになった・・そんな話になります。
これは卵が先か鶏が先かと同じですが、
私はどうしても“しびれ”という地名が先にあり、
湖の名前もこれに拠ったものだと思っています。
偉そうにそんなことを言う理由の一つに
付近一帯の小字(こあざ)を調べていると
“大尾連”(おおびれ)という地名を見つけたからです。
四尾連と大尾連
偶然とは思えません。
「ひれ」や「びれ」つながりで関連する地名だとすると、
「水が冷たいから」・・・というのは
やはり後世にできた説話だと思うのです。
また、“大尾連”があったら“小尾連”もあるのかと思えば
それはありません。
ひょっとしたら過去にあったものが忘れ去られたのかもしれませんし、
大小の“大”ではないかもしれません。
それでは、その「ひれ」や「びれ」は何を意味するのか。
問題はここです。
言うまでもなく、一回二回行ってみたくらいで
何も分かるわけはないのですが、
私が最もコレが匂う・・と思っているのは
“ひる”が付く地名です。
たとえば昼田、比留間、蛭山、蛭川などです。
そして、これらの“ひる”は湿地を意味するといいます。
岐阜県郡上市の蛭ケ野高原は広い湿原、
伊豆にある源頼朝ゆかりの地、
蛭ケ島(蛭ケ小島)は狩野川右岸の低湿地。
さらに、水戸の南東にある涸沼はかつて“蒜間の江”(ひるまのえ)といい、
周りはやはり低湿地になっているそうです。
つまり、“ひる”が“びれ”に変わったと言いたいわけです。
地名は言葉ですから、これくらいの変化はよくあります。
四尾連湖の一帯が湿地帯だったかどうか
もっとよく調べるべきでした。
でも、どうでしょう。私の推理!
じゃあ、大尾連は「大きな湿地」だとして
四尾連の“し”はどうなるんだ?
そんな質問が聞こえてきそうです。
でもそろそろ手も足もシビレテきたので
今回はこれくらいにしようと思います(笑)
(山梨県市川三郷町)
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