ボラボラにて「サヨナライツカ」
広島に引っ越してきて1ヶ月が経ちました。
「出身は?」「京都です」
「じゃあ地縁はないんだ!」「はい」
このやりとりも10回以上はしたかと思います。
「女の子なのにかわいそうに」と言いつつも
総合職なのでまぁ仕方ないかで終わる簡単な話。
一人だから本当に簡単な話です。
週末は、立町の喫茶店にて
辻仁成の「サヨナライツカ」を読みました。
開始早々、婚約者がいる青年の前に美女が現れる。
わけも分からず体を重ねて、二人して非現実に溺れる。毎日毎日ズブズブの関係を築く。
世間体は無視して目の前の瞬間を大事にする男女、
つまり理性ではなく本能だけで結びついている二人が、徐々に破綻していることに気付きながら、傷つけるように抱き合う。
それを愛と呼んでいいのか分からない。
そしてそんな甘いだけの時間は現実がアッサリ終了させてくれる。
理性の流れに乗ってしまえばそちらは安全で泳ぎやすい。
あれは何だったんだろう?
単に若かっただけなのだろうか?
いや、それでもその本気だった瞬間は確かに存在する。愛だったと言わせてくれよ。
途中から物語の筋を追っているのか、かつての恋人のことを考えているのか分からなくなっていました。
結末は少し安っぽいような気もしたけれど、それはどうだっていいことで、鮮明に彼のことを思い出させてくれる荒々しさに泣いていました。
賛否がはっきり分かれそうな本です。
浮気や不倫にアレルギー反応がある人や、表現の繊細さを味わいたい人には向かないかもしれません。
しかし自分のことを理屈では説明できない人には是非、おすすめしたいです。